“次に来る”IPの追い風に。独自のセレクトでグッズ開発を行う新ブランド『PROPELLER』が秘めた可能性
2021.09.24
Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。
「作品とファンの熱量を更なる“推”進力にするグッズブランド」をメッセージに、2021年6月にHelixesが立ち上げた新ブランド「PROPELLER」。ヒットの兆しがあるアップカミングな作品が、IPビジネスにも挑戦できるよう仕掛けていくこのブランドは、Helixesが持つ強みを活かし、シナジーを生み出す事業としての可能性も秘めています。
ブランドが目指す世界や立ち上げの経緯、Helixesが描くビジョンなどを、プロジェクトマネージャーの梶野、アカウントプランナーの平嶋、COOの八木に伺いました。
これからが期待されるタイトルを加速させるために
―新たにアニメや漫画をテーマにしたブランド「PROPELLER」が立ち上がりました。どのようなブランドなのでしょうか?
梶野 例えば漫画だと、単行本はまだ3巻しか出ていないけど、質が高くコアなファンの間では盛り上がっている“アップカミングな”作品等を取り扱い、グッズ化などを行うブランドです。そのため、作品選びにはかなり力を入れています。将来的には、PROPELLERのTwitterやSNSをフォローしていれば、今熱い作品を知れる。そんなキュレーターのような存在にもなっていきたいと考えています。
漫画やゲームなどIPが好きな人であれば、新たな作品に出会える場所だし、作品のファンからすればより深く作品を楽しめる。版元様からすれば作品を知ってもらう機会を生み、ファンを増やしてくれるブランドでもある。まだスタートしたばかりですが、こうした考えが背景にあります。
─EC機能にとどまらず、メディアなどいろいろな方法で作品を広めていきたいという思いがあるのですね。
平嶋 ブランドとして一番叶えたいのは、そこですね。グッズを出すことは販売収益だけでなく、その作品を知ってもらう機会を増やす狙いもあって。そうした様々なアプローチで、IPをスケールさせていきたいと考えています。
というのも、私たちもPRに関わる仕事をたくさんしていますが、IPがスケールするタイミングを見極めるのは本当に難しいことなんです。漫画として人気はあるものの、グッズなどのIPコンテンツとして売れるかどうかは、編集部にも分からない。本当に面白くて、ファンも確実に付いている作品でも、どこまでIPビジネスとして広げていくかを検討する段階が必ず存在します。
そういった段階にある作品の商品企画をメーカーに提案したときによく言われるのが「それ、売れるの?」という質問。そこで「まだ実績がないので分かりません」と言うと、止まってしまうことが多いんですね。
だとしたら、まずは小規模なところから、IPビジネスへの挑戦をお手伝いする存在が必要なのではないか。こうした思いから「IPにとっての推進力となりたい」というブランドメッセージに掲げています。
─ということは、IPを保有する側からすると、マーケティング的要素もあるということですね。
平嶋 そうですね。IPにとっては、マーケティングのテストが行えることもメリットの1つです。ただ「テストが行えます」という売りだけだとサービスの伸びしろにあまり期待できないので、グッズとしてのPR活動もしていますし、梶野が言ったように、ゆくゆくはキュレーター的なポジションになりたいとは思っています。
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「PROPELLERで売れなかったらグッズ化は難しいのかもね」「PROPELLERなら、この作品を任せられる」と言われるぐらいの存在になるのが大きな目標の1つです。
感性とデータを掛け合わせる
ー取り扱う作品はどのように決めていくのでしょうか?
梶野 IP好きなチームメンバーの目利きもありますし、漫画関係の賞のランキング、Helixesグループの中でシナジー効果の高い漫画の読書記録サービス「comicspace」のデータなども一部参考にしています。定性的、定量的両方の観点を重視して、いろいろなデータや知見を組み合わせて選んでいます。
平嶋 定性的な視点で言うと、僕らが「これを応援したい!」という新しい作品であることも重要ですね。そして、もちろんユーザーも応援したくなるような新しいコンテンツがあればあるほど、お手伝いできる版元様が増えるのかな、と思います。
今は漫画だけですが、特にジャンルの制限を設けているわけではありません。ゲーム、映画、あるいはアーティストも今後取り組んでいくかもしれません。新しいコンテンツの推進力になれるのであれば、領域は問わないです。
─ローンチ時のリリース情報に『ユーザーデータとして「生の声」が入っています』とありますが。
平嶋 「comicspace」のレビューやスコア、あるいはTwitterでのリアクション数といった数字を中心に見ています。やはりユーザーさんの声を聞いていると、人気の火種のようなところがあって、確実にデータに表れているんですね。そうしたリサーチは欠かさないようにしています。
その結果、ご提案に伺う版元の方から「もうあの作品のグッズを手掛けているんですね」と言われることもよくあります。グッズ化の準備が始まるのは、リリースの1年くらい前。かなり早い段階から「次に来る」作品を見付けて仕掛けているんです。
─感性とデータ分析を駆使した、作品に対するアンテナ感度がPROPELLERの武器でもあるんですね。
平嶋 はい。もう1つの武器として、maxillaのクリエイティブリソースが使えるという点も、他にはない強みかなと。販促用のプロモーション動画からSNS用のイメージに至るまでうちのデザイナーが凝って作っていて、露出面ではかなり力になれるのではと思っています。
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新規事業開発コンペがきっかけに
ーPROPELLERは、Helixes内で行われた新規事業の開発コンペがきっかけでスタートしたとお聞きしています。どういった経緯で事業がスタートしたのでしょうか?
八木 これまでも、より広い世界で、Helixesのビジョンを体現していくために「Roppyaku」という社内開発チームを作り、「REClike」や「comicspace」というサービスを立ち上げ、「comicspace」については関連会社化もしています。maxillaのクリエイティブの強みを活かし、Helixesがより大きな経済圏を形成するために、社員それぞれがやりたいと思う火種にスポットを当てる動きは継続して行ってきました。
そうした動きをより活性化するために、「Step Forward」という、新規事業開発コンペの仕組みを社内に作ったんですね。このプロジェクトで最初に手を挙げてくれた平嶋が、PROPELLERの元になる発想を提案してくれました。
既存のmaxillaのクリエイティブやcomicspaceのデータなども活かせて、かつHelixes経済圏の中で伸ばして行けそうな事業でしたので、すぐに「よし、やろう!」となりましたね。
─Helixesがこれまで行ってきたこととの親和性が高かったんですね。
八木 そうですね。Helixesの中で、いろいろなシナジーを生めるかは大きなポイントでした。加えて先ほど話したように、版元様の課題感を解決できて、ファンも喜ぶサービスであるという点も、いいところに目をつけたなと思います。
─平嶋さんはなぜこの案を出されたのか覚えていらっしゃいますか?
平嶋 Helixesの強みは、高いクリエイティブスキルとIPビジネスに関わるマーケティングやPRの豊富な経験値です。こういった強みを、版元様がIPビジネスにおいて抱える課題の解消に繋げるには「僕らが実際に “メーカー” になってグッズを作るのが最も効率的では」という考えがありました。ただ、メジャー作品になるとどうしても量というか、数の勝負が必要になり、つまり大規模な生産が必要になってきます。工場をどれだけ多く抑えるかといったことにもなるため、それではシナジーは生まれないと思ったんですね。
だとしたら、新たに版元様の市場とIP市場の双方の架け橋になるブランドを作るのはどうか。Helixesの各事業グループとのシナジーがあれば、そんなブランドも作れるのではないか。そんな発想から立案しました。
自社でメーカーとしてグッズ販売などを運営していれば、お客様との取引きの際「Twitterでの発信はこうした方がいいですよ」といった提案にも説得力が増します。メーカー側の視点を得ることで、自分たちの他の事業や広告との向き合い方にも還元されればいいなという考えもあります。
ニュージェネレーションの可能性
ーところで梶野さんは、新卒入社で事業立ち上げの経験などはなかったかと思います。ローンチを終えた今、どんなことを感じていますか?
梶野 ここ1年ぐらいはローンチに向けて無我夢中でやってきたので、あまり記憶がないですね(笑)。ただ、明確な役割をもらったわけではなく、できることをやって行くという形だったので、とにかく進んでいこうという一心でやってきました。5月に入社して、プロジェクトが始まったのは夏。入社後から、私の半分ほどのリソースを常にPROPELLERに費していました。
平嶋 事業の根幹となるビジネスモデルやブランディングの大半を作ったのは、梶野とアートディレクターの梅田という新卒1年目のメンバーです。PROPELLERは、事業計画からデザイン、製造、予算管理など、1つのブランドの中で多くの人が多様な動きをするプロジェクト。全体を把握しながら上手く進行していた、梶野さんのマネージャーとしての動きは素晴らしかったと思います。
梶野 入社1年目で新規事業のコアな部分に関われることは他社ではほとんどないと思いますし、2年目でプレスリリースを出せたことはとても良い経験になったと思います。このプロジェクトには心理的安全性があったからできたのかなと、今もすごく感じています。というのも、私や梅田くんは1年目で、そもそも何がミスなのかも分からない状態だったのですが、とても安心して自分たちのアイデアを実践に移すことができたんですね。
それはやっぱり、何かあったときにはカバーしたり、バックアップしてくれる先輩方がいたからです。チームとして新卒の力を伸ばそうと、そういう状況に導いてもらえたのは大きかったと思います。
平嶋 彼らの新鮮な発想は僕らにとってもいい刺激です。広告業界をはじめ、これから構造がどんどん変わっていく時代。そんな中で、自分たちでブランドを立ち上げてメーカーになる事業を、うちのニュージェネレーションである梶野さんと梅田君が主導しているのは、会社としても今後の大きな希望にもなるのではないでしょうか。
―最後に、PROPELLERの今後の展望を教えてください。
梶野 今後は、新しいIPを発掘してからファンの皆様にグッズを届けるまでの時間を縮めて行きたいなと思っています。現在扱っている商品は、昨年から1年ほどかけて準備を進めていきました。最初だったとはいえ、少し多めに時間を掛けたのかなとも思っていて。販売までのリードタイムを半年、3ヶ月という感じで早めていって、扱う作品を増やしていきたいですね。
平嶋 新しい商品開発も今後挑戦したいテーマですね。「どういう商品があればグッズとして面白いか」といった角度で発想することが、これまでの経験上あまりなくて。なので、PROPELLERで製品の素材であったり、「新しく今、市場に求められている商品とは何か?」をしっかり追うことで、新たなリソースとなるノウハウを蓄積していきたいです。まだまだ、日々チャレンジですね。
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Speaker
Shintaro Hirashima
Momoyo Kajino
Kohei Yagi -
Interview & Text
Kentaro Okumura
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Edit
Mami Sonokawa
Kohei Yagi
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