NYCCを歩いて見えた、Anime Expoとの違い。日本IPはどちらに出るべきか?
2026.10.28
北米で日本のアニメや漫画を広げたい会社から、Helixes USAが最もよく受ける相談の一つが「Anime ExpoとNew York Comic Con(NYCC)のどちらに出るべきか」です。2026年7月のAnime Expo(ロサンゼルス)と、10月8日から11日のNYCC(ニューヨーク)の両方を歩いたAdam Grahamが、両イベントの違いと、出展を決める前に考えておきたいことをまとめました。
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NYCCは「本気」のイベントだった
NYCCの会場に入ってまず感じたのは、「これは本気だ」ということでした。非営利団体が運営し、ファンが長年自分たちの手で育ててきたAnime Expoには、DIY精神にあふれ、文化祭のような手ざわりがあります。それに比べ、2006年にイベント企業のReedPopが始めたNYCCには、業界の大手や著名人がそろう華やかさがあります。今年は『スター・ウォーズ』のヘイデン・クリステンセンや、ニコラス・ケイジらハリウッドセレブがゲストに名を連ね、Whatnotのブースでは伝説的なヒップホップグループ、フージーズのメンバーがその場でパフォーマンスをしていました。ハリウッドの第一線にいる人が当たり前のように現れる、メインストリームを強く感じるイベントです。
来場者数を見ると、Anime Expo 2026が延べ42万2,000人以上、NYCCが25万人以上と発表されています。ただ、NYCCは集計方法を公表していないので、この二つの数字からどちらが大きいかは正確には判断できません。
両方を歩いて私が強く感じたのは、数字には表れない違いでした。来ている人の顔ぶれが、大きく異なるのです。
Anime Expoは、アニメが原体験にある若い層が集まる場
Anime Expoの来場者は若く、子どものころからアニメを見て育った人が中心です。コスプレが盛んで、来場者の関心はほぼすべてアニメに向かっています。日本のアニメや漫画のIPは会場のどこにでもあり、来場者もそれを前提に歩いています。
新作や続編の発表を、すでに作品を知っているファンに届けるには、とても効率の良い場です。その一方で、来場者のほとんどは、もともとアニメに関心のある人です。目当ての作品の隣で別の作品を知ることはあっても、アニメをふだん見ない人が日本のIPに偶然出会う場面は多くありません。
NYCCは、歴史やステータスを重視する大人のコレクターと家族が混ざる場
NYCCに入って最初に感じたのは、扱うジャンルの幅の広さでした。コミック、テレビ、映画、ゲーム、アニメが、Javits Centerの全体に広がっています。来場者の年齢層はAnime Expoより高く、家族連れ、大人のコレクター、特定の作品に強いこだわりのないライトなファンが入り混じっています。来場者の関心も、たくさんのフランチャイズタイトルに分かれていました。
日本のIPは、この会場では数あるジャンルの一つです。ブースの前で初めてその作品に触れる人も少なくありません。そこがAnime Expoとの最も大きな違いであり、NYCCに出る意味でもあります。
古い号や長い歴史に値段がつくコレクター文化
お金の使い方も違いました。NYCCの来場者は、その場の衝動で小物を買うより、コレクティブル、プリント、限定品にお金を使っていました。アーティストが自作を売るArtist Alleyでも、好きなIPへのオマージュ作品より、アーティスト本人のサインが入ったものが買われていた印象を受けました。
会場を歩くと、第三者機関の鑑定を受けてケースに封入されたコミック、何十年も前のバックナンバーがぎっしり詰まった棚、同じ号の表紙違いを集めるためのバリアントカバーが目に入ります。オークション会社のGoldinは「grails(コレクターが探し続けている希少品)」について話そう、という看板を出していました。古い号であること、初版であること、長く続いてきた作品であること自体に値段がつき、何を持っているかが持ち主のステータスになる文化です。

一冊ずつ袋に入れて保管されている

オークション会社が出展していること自体、Anime Expoではまず見かけない光景です。オークションは転売(リセール)のいちばんわかりやすい形ですが、この会場では嫌われ者ではありません。値段がつき、売り買いが続くことで、作品やその世界観の価値が上がっていく。オークションはその仕組みの一部として受け入れられています。
象徴的だったのが、ヒップホップのメディア企業Mass AppealとMarvelによる『Incredible Hulk #1』の特別版です。Busta Rhymesとプロデューサーの故J Dillaの作品をもとにしたバリアントカバーで、1冊30ドルほどでした。Marvelが公式に出した商品なのに、ライブオークションのWhatnotのブースの中でも売られていました。Marvelは、出した後にコレクターの間で売り買いされることまで織り込んで、この一冊をつくっているのだと思います。

リセールや、ジャンルをまたいだコラボレーションが、IPの価値を育てる土壌になっている。NYCCを歩くと、そう言い切ってよいと感じます。
長い歴史を持つ日本のIPにとって、これは追い風になります。例えば今回NYCCに出展していた『NARUTO-ナルト-』は原作の連載開始が1999年、『ガンダム』は最初のテレビシリーズが1979年です。長い歴史そのものが、NYCCの来場者には価値として伝わります。作品の年表や初期の資料を見せることが、このイベントでは作品の説明以上の意味を持ちます。
ライセンスやブランドの管理は、日本とそれ以外という分け方から、地域ごとや都市ごとの分け方へ移す段階に来ているのではないでしょうか。ニューヨークであれば、その手がかりは街の文化そのものにあります。
ニューヨークの街の文化が会場に入ってくる
NYCCには、ニューヨークという街の文化が織り込まれています。『スパイダーマン』のようにニューヨークを舞台にした有名IPが多いことは言うまでもありません。今回強く印象に残ったのは、先ほども触れたMass Appealのブース兼ストアでした。NasやBusta Rhymesといったアーティストが限定コミックやプリントを発表し、ニューヨークのヒップホップとコミックの文化が一つの場所で混ざっていて、会場の中でも特に高揚感がありました。
IPを持つ企業がニューヨークのヒップホップ文化を理解したうえでアーティストと組んでいることが、会場のあちこちから伝わってきました。

Anime Expoがアニメファンのための場だとすれば、NYCCは街のさまざまなカルチャーが交わる場です。日本のIPも、その交わりの中にどう入るかを考える価値があります。
出展を決めるときの判断軸
ここまでの違いを踏まえると、判断軸はシンプルです。すでに作品を知っているファンに、新作や続編の発表を届けたいならAnime Expo。まだ作品を知らないライト層や家族連れに、初めて触れてもらいたいならNYCCです。
この点で最もうまく対応していたのが『ガンダム』でした。ブースに「What is GUNDAM」と題した大きなパネルを掲げ、1979年に始まった日本のSFアニメであること、巨大ロボットのジャンルを形づくった作品であることを、映像付きで説明していたのです。日本のIPがどこにでもあるAnime Expoでは見ない種類の展示ですが、NYCCではとても良いアイデアだと思います。

NYCCに出るなら準備しておきたいこと
NYCCに出るなら、アニメ専門のイベントとしてではなく、新しいファンと出会い、関係をつくるイベントとして計画することを勧めます。
具体的には、発表や米国初公開の瞬間を一つだけ用意し、そこにタレントの登場、英語を主体としたパネル、実際に手で触れられる体験を組み合わせます。その場で興味を持った人がすぐ次の行動を取れるよう、配信、書店、物販などの米国のパートナーを先に確保しておきます。
会期の前後はプレス、小売、ライセンスの打ち合わせに充てると効率的です。限定品の数量や列の運営は現地のチームと事前に詰め、当日その場で判断できる立場の人を日本から連れていってください。
2026年のNYCCで見かけた日本のIP
今回のNYCCで存在感があった日本のIPを挙げておきます。長く愛されてきた『NARUTO-ナルト-』は多くのファンを集め、メインステージのパネルが満席になり、新作漫画の予告やカードゲームの世界同時発売などが発表されました。漫画『気になってる人が男じゃなかった』は、エントランスの巨大バナーから配信まで、会場の至るところで展開されていました。『ガンダム』は先ほどの説明パネルを出し、通りの向かいでは講談社がKodansha Houseを開いていました。会場の外壁やエントランスには、30周年を迎えた『たまごっち』のビジュアルも掲げられていました。
これらの作品が会場で何をしていたのか、そしてライブオークションのような、日本ではまだあまり見ない売り方については、次の記事で詳しく紹介します。
まず一度、行って見てほしい
今年、私は日本の東京ゲームショウ、LAのAnime Expo、シアトルのPAXなど、多くのイベントを回りました。その中でもNYCCは、ほかのどれとも違いました。
NYCCは、日本のIPに関心を持つ米国の一般層がいかに大きいかを示しています。機会は、既存のアニメファンに語りかけることより、新しいファンに作品を触ってもらうことにあります。自社のタイトルと出会う瞬間を一つ選び、手で触れられるものにして、その後に視聴や購入ができる場所へつなげてください。そして計画を立てる前に、まず一度行って、会場を自分の目で見てください。
北米のイベント出展の計画から、現地パートナーとの調整、会場での運営まで、Helixes USAにご相談ください。お問い合わせはこちらのフォームから受け付けています。
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Text
Adam Graham (Helixes USA inc.)
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Translation / Edit
Kentaro Okumura
Tomoya Hyodo
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