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実写、CG、モーショングラフィックスを駆使しながら作り上げていく、ディレクターとしての“らしさ”|山口 悠野(maxilla)

2022.01.25

Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。

今回はHelixesのクリエイティブチーム・maxillaに所属する映像ディレクター・山口悠野に、これまでの経歴や影響を受けた作品、ディレクターとしてのスタンスを聞きました。

フリーランスで、CG・モーショングラフィックスの制作などを行っていた山口は、maxillaに参画後、実写映像やライブ配信の総合演出など活動の幅を広げていきます。そうした過程の中で、制作をリードする「ディレクター」としてのあるべき姿とも向き合い続けていきました。Helixesらしいディレクター像を模索しながら、日々進化を続ける山口の活動に迫ります。

“不真面目”だった学生時代と映像作家・細金卓也氏との出会い

―maxillaに入るまでの経歴を教えてください。

maxillaには4年ほど前に中途入社しました。その前はフリーランスで、CGやモーショングラフィックスをずっと作っていたんですが、実写もやりたいなという思いは心の片隅にずっと抱いていて。大学生からの知り合いだった龍之介(志村)にmaxilla入らないかと誘ってもらったとき、これは新しい挑戦をするいい機会かもな、と思い入社しました。1年に1回会う程度の仲だったので、誘われたときは少し驚きましたけどね。

―映像制作は大学で学んだのですか?

武蔵野美術大学の映像学科出身なんです。ただほんとに恥ずかしいんですけど、大学時代はずっとFPSのゲームばっかりしていて、ろくに単位も取らない学生でした。

それでも、After Effectsだけはちゃんと学ぼうと思って、それだけはしっかり勉強した自負はあります。After Effectsを身につけておけば、将来食いっぱぐれることはないかなって。そしてその延長線上で、細金卓矢さんやtakcomさんなどの作品をVimeoでよく見るようになりました。

―その後、山口さんは細金さんのもとで、インターンをすることになるんですよね。

そうです。ちょうど細金さんに興味を持って作品を見始めたときに、Twitterでインターンを募集していたので応募しました。そのインターンを通じて、映像制作の経験値はある程度得られたかなと思います。大学では留年したりといろいろあったのですが、10ヶ月ほど制作会社で働いた後にフリーランスで活動して、maxillaに入ったという流れですね。

―影響を受けた映像監督などはいますか。

やっぱり、原体験としては細金さんです。年齢もそんなに変わらないぶん、余計に影響を受けたというのはあると思います。細金さんはインターンだった僕にも「とりあえずなんかモーショングラフィックスとかやってみてよ」といろいろな仕事を振ってくれて、その経験は今にも繋がっています。

ビジュアル面では、モーショングラフィックスとかCGとか実写も含めて、Vimeoをよく見ていました。「YouTubeよりもVimeoにかっこいい映像がある」という時代だったんです。さっき名前を挙げた細金さん、takcomさん、あとはWOWの柴田大平さん、TANGRAMの田島太雄さんの作品はとくに見ていました。モーショングラフィックスを主軸にした作品を経由してディレクターになった人たちですが、そうした経歴も含め、影響はすごく受けています。

―山口さんの現時点でのキャリアにおける代表作を教えてください。

ひとつだけ挙げるのは難しいですけど、やっぱり米津玄師さんの『春雷』のMVでしょうか。maxillaに入って、初めてディレクターとして実写映像にチャレンジした作品です。ディレクターとしての経験が浅かったぶん、段取りの面で至らない点もあって、先輩がめちゃくちゃフォローしてくれたことを覚えています。教わりながらも、チームとして作り上げていった点でも非常に思い出に残っていますね。

ただ、そもそも僕に「自分らしい作風」が確立されているかというとそんなことはなくて、まだこれから。今はmaxillaのディレクターとしての役割をしっかりと全うする時期。自分らしい強みを磨いて、アウトプットしていくにはもっと経験を積まないといけないと思っています。

―自分らしい強みを、山口さんはどう解釈していますか?

まず映像の世界にはたくさんのディレクターがいるので、その中で差異性を分かりやく提示できるかどうかは大事なのかなと。そう考えると、今の自分にとっては撮影後の工程、編集やカラコレ、CG、コンポジットなどを一通り1人でできるのは強みかなと思います。たとえば、yamaさんの『真っ白』のMVは、撮影してから約1週間程度で納品しています。CGも使っているんですけど、納品ギリギリまでずっと自分で触って、仕上げていました。こうした工程を、1人で完遂できるのは強みだと思います。

―なるほど。では作品を作るときに、大事にしていることはありますか?

なんだろう……撮影現場で上機嫌でいることですかね。これはとくに最近、めちゃくちゃ気を付けています。入社当時はディレクターとしての余裕があまりなくて、ちょっと不機嫌そうに見られることが多かった。もともとそこまでテンションが高いキャラではないので、なおさらだったみたいで。

でも、そんなピリピリした現場だと、周りにいるみんなも力を出しにくいだろうし、もっと自分が現場の雰囲気づくりをできるようになるといいのかな、と思います。

―そのために、上機嫌でいようと。

まぁ、当たり前といえば当たり前なのかもしれないですけどね。ただ、無意味にポジティブでいるのも実は違うというか、よくないという言説もあるようです。「トキシック・ポジティビティ(有害なポジティブさ)」と言って、ようするにBADな気分を無理やり抑え込んでポジティブでいようとすると精神の負担になってしまう、という。僕自身、BADに入り込みそうになるときもあるので、そうした感情とうまく付き合いながら、ポジティブな雰囲気を作り出すのが大切なのかなと。

―映像制作の現場には、まだ体育会系な雰囲気も残っていますよね?

そうですね。でも、僕はそういうのは止めたほうがいいかなと思っています。やっぱり関わってくれた方が楽しかったり、ハッピーでいられる方が、単純にいいじゃないですか。いい作品を作るんだったら何でもやっていいのかと言われたら、僕はそうじゃないと思う。

ただ、これはあくまで僕の個人的な主観であって、スタッフには僕と異なるスタンスの人ももちろんいるでしょう。だから無理して周りの人に付き合ってもらうのも違うのかなとは思います。Netflixも「リスペクトトレーニング」(※)というのを全てのスタッフに対して実施していますが、そうした方法がいいのかどうかは今後も考えていきたいと思います。

※…職場におけるパワハラやセクハラ防止への理解を深め、職種を超えた議論の場を提供する講習のこと。最近では白石和彌監督が『狐狼の血 LEVEL2』の制作に取り入れた。

​​Helixesらしいディレクターとしてのあり方

―Helixesに所属する価値をどう捉えていますか?

1人ではできないことはたくさんあるので、チームがいることにめちゃくちゃ感謝していますし、いい経験をさせてもらえていると思っています。そして、いい意味で流れが早いなって思うこともありますね。個人としても、Helixesに入っていなかったらこんなにたくさんの実写映像の経験はしていなかったでしょうし、組織としても、ここ2~3年でこんな規模の会社になると思っていなかったですから。そういう意味では、​​Helixesでしかできない経験ができている。それがここにいる価値なのかなと思います。

―映像制作の中でも、Helixesだからこそ担える役割や、アーティストとの関係が構築できる、という側面もありますよね。yamaさんのクリエイティブに関しては特にそうではないですか?

そうですね。もともとは、さっきも話に出た『真っ白』のMVをディレクターとして作って、もう一つ『麻痺』のMVも作りました。それをきっかけにマネージャーの方とは「これからも一緒にクリエイティブ全般をやっていけるといいですね」って話をしたんです。

それ以来、Helixesではyamaにおける本当にさまざまなクリエイティブを担当させていただいています。僕だけではなくて、社外のディレクターやデザイナーとリリックビデオや、細かい部分のデザインを手掛けていて。コミュニケーションの量を考えても、単なる受発注の関係というよりも、もう少し濃い関係性なのかなと思います。直近だと「Versus The Night 0.0」という配信ライブの企画や制作、総合演出も担当しました。あまり好きな言葉ではないんですけど、yamaさんとのプロジェクトではクリエイティブ・ディレクターみたいな役割を担っていますね。

クリエイティブ・ディレクターという肩書は少し違うんですね。

なんかちょっと偉そうな気もして、毎回迷っちゃうんですが、役割的にはクリエイティブ・ディレクターと同じなのかなと。ただ、諸々の最終決定をするのはyamaさん本人だったりマネージャーだったりするので、そこに至るまでのお手伝いをさせていただいている、というのが正確だと思います。1本のMVを作って終わるのではなくて、継続的にいろいろな仕事ができるのは自分にとっても、アーティストにとっても良い試みだと思っています。

―配信ライブの総合演出をやってみて手ごたえはどうだったんですか。

配信ライブでは(映像を作るときに比べて)視点を1段階上げないといけないんです。映像演出だけじゃなくて、どうやったらお客さんが見てくれるんだろうとか、そのためにどういった表現がベストなんだろうとか、そういう範囲で考えていけたのはすごい良かったかな。映像のディレクションだけじゃなくて、キャンペーンまで含めた全体をディレクションできたのは、いい経験でした。1万人ぐらいのリアルタイム視聴者がいたので、結果としても良かったのかなと思います。

―今後も、どんどん領域を広げていけるといいですね。

そうですね。とはいえ、基本的にやっぱり映像ディレクターが軸としてはあるので、その経験値をもっと積んで、力をつけていきたいです。その軸を強くしながら、幅広い活動もどんどんやっていけるといいかな、と思います。繰り返しになりますが、そうした活動の仕方ができるのは、Helixesにいるから。これまでの経験と、この組織にいるからこそできる経験を大切にして、自分らしい強みをどんどん磨いていきたいですね。

  • Speaker

    Yuya Yamaguchi

  • Interview & Text

    Kentaro Okumura

  • Edit

    Luna Goto
    Kohei Yagi

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