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Culture of Helixes「わたしたちの偏愛 – スポーツ漫画 -」

2026.01.30

今回は「わたしたちの偏愛」。毎回さまざまなタイプの偏愛を持つメンバーが集まり、その熱をお届けします。
第5回目は「スポーツ漫画」 社内有志イチオシのスポーツ漫画を選出いただき、作品との出会いや魅力を語っていただきました。
※本稿は『SLAM DANK』『ハイキュー!!』『SUGAR』『RIN』完結までの内容を含みます。

『SLAM DUNK』(井上雄彦)

Selected:Hiromitsu Mori(Produce Group)

■作品との出会いと魅力:

一番好きなスポーツ漫画は『SLAM DUNK』です。バスケ漫画だけでも相当読んでいますが、やっぱりこれが一番ですね。

連載当時、バスケ漫画は売れないというのが業界の定説だったらしいです。実際、ヒットしていたのは『SLAM DUNK』と『DEAR BOYS』くらいで、両作品とも最初からバスケ漫画の体裁は取っていません。『SLAM DUNK』はヤンキー漫画風、『DEAR BOYS』は学園青春漫画風。そこから徐々に本格的なバスケへと移行していく構成でした。

最近はNBAなど現実のスポーツを反映した作品が増えています。『SLAM DUNK』の90年代はインサイド中心のバスケが主流でしたが、今は3ポイント重視の戦術が漫画にも取り入れられている。サッカー漫画も同様です。昔はトップ下やフォワードが花形だったのが、『アオアシ』では左サイドバックが主人公。現実のヨーロッパサッカーでサイドバックがゴール前まで攻め上がるようになった変化と連動しています。個人的にはリアルな戦術が反映された作品が好きですが、大事なのは説明を演出にうまく落とし込むこと。主人公の気づきと一緒に読者も理解できる、そういう構成が王道だと思います。

小学生の頃に読んで、バスケを始めました。当時はサッカー人気が圧倒的だったのに、この作品だけでバスケブームが起きた。バスケ部員の9割は読んでいましたね。試合前に山王戦を読んでモチベーションを上げるのが定番でした。

主人公が初心者であること──これが『SLAM DUNK』最大の魅力だと思います。「左手は添えるだけ」のような基礎をひたすら積み上げていく。しかもタイトルは『SLAM DUNK』なのに、最後のシュートはダンクじゃなくて、普通のジャンプショット。地道な練習が試合を決める、あの展開に痺れました。


▼『ハイキュー!!』(古舘春一)

Selected:Rise Haneda(Produce Group)

■作品との出会いと魅力:

わたしは森さんとは真逆で、スポーツ自体が得意ではありません。ルールを理解して楽しむというより、登場人物それぞれの人生や人間関係を読むタイプです。

『ハイキュー!!』は連載終了の1~2年前から読み始めました。ド世代なのに、謎に逆張りして読んでいなかったんです。中学の頃、バレー部の男子たちが「ローリングサンダー!」とか言っていたのに、『HUNTER×HUNTER』みたいに古くからやってる作品を読んでいる自分に酔いしれていて(笑)。2018〜19年頃にようやく手を出して一気読みして、最終話で大泣きしました。

作品の魅力は、ひとつのスポーツに対するそれぞれの関わり方が丁寧に描かれているところです。主人公たち以外のチームのエピソードも試合中に挿入されるから、両方に感情移入してしまう。試合のプレーだけではなくその前後にある練習や食事や生活、またはバレーボールというスポーツを次の世代に”繋ぐ”ということ。作品全体を通じて全ての出来事が「”繋ぐ”球技である」という1話の言葉に帰結しているのがアツいなと思います。

演出的な側面もとても好きで、漫画ならではのコマ割りから感じられるスピード感や、矢印でボールの方向を示す独特の擬音表現が、試合の臨場感や空気感、勢いを生み出していると思います。

とくに印象に残っているのは鴎台戦です。日向が途中退場して試合は敗北、その後の学生生活もかなりのスピード感で描かれて、すぐ「数年後」のモノローグが入る。これを読んだときは衝撃でした。しかもこの試合を最後に高校編は終わり、物語は大人編へ移行する。強い相手はしっかり強い、そのリアルなパワーバランスが好きです。


『SUGAR』『RIN』(新井英樹)

Selected:Yamato Soma(Produce Group)

■作品との出会いと魅力:

『ザ・ワールド・イズ・マイン』『キーチ!!』などの新井英樹先生によるボクシング漫画です。他作品と比較すると知名度はあまり高くないかもしれませんが、僕はこの作品をきっかけの一つにボクシングを始めました(笑)。中学までサッカーのゴールキーパーをやっていましたが、身体的な要因もあり辞めて、格闘技に興味を持っていた頃に出会った作品です。

惹かれたのはスポーツ漫画ではよくある「天才と凡人」というテーマに対する描き方です。主人公は北海道出身の高校生で、元ダンサー。ざっくりいうと「圧倒的であり傲慢な天才」で、高校を中退して上京しながらプロを目指すのですが、表面上は全く練習せずに強敵を倒したり(逆に完全に相手のことを舐め切って倒されたり)、いろんなキャラクターに悪態を吐きまくったり、、、ちょっとlogでは言いづらい行動も多々あるような、読んできたスポーツ漫画では唯一無二のある種ヒールなキャラクターです。

従来のスポーツ漫画が持つ「チームの絆」や「練習が実を結ぶ」といった魅力とは裏腹に、この作品は長年努力してきた人間が、圧倒的な才能を持つ主人公に信じられないくらいあっさり負けたり、絆や仲間を主人公がメチャクチャにこき下ろしたり、、、ボクシングが個人競技であることも一因であるように感じるのですが、「才能」の鮮やかさと残酷さをとても独特でありながら秀逸な台詞回しと演出で描いています。主人公も裏では常人離れした走り込みや練習を重ねているのですが、本人はそれを「努力」とは呼びません。天才にとっては当たり前のことだから。そんなリアリティとロマンの独特な融合と、そこから感じられる美醜両面の人間のエネルギーを強く感じられる部分に惹かれました。

ボクシングのルールは後から知りましたが、詳しく何をしているか分からなくても競技する姿が美しく見える。そうやって人を惹きつけ、例えばその競技を始めるなど読者の行動を変容させたり、または一つの競技という装置を通じて、そのキャラクターの人間性や欲望、エネルギーを感じさせてくれるのがスポーツ漫画の力だと個人的には思います。

  • Speaker

    Hiromitsu Mori
    Rise Haneda
    Yamato Soma

  • Text

    Kentaro Okumura
     

  • Edit

    Kohei Yagi
    Yamato Soma

  • Photo

    Helixes Member

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