NYCC 2026で熱かった日本IPは? 新しい形のファン接点、ライブオークションに見る北米での売り方
2026.10.28
2026年10月8日から11日にニューヨークで開かれたNew York Comic Con(NYCC)。コミック、映画、ゲーム、アニメが同じ会場に集まるこのイベントで、日本のIPはどう受け止められていたのか。そして来場者は何にお金と時間を使っていたのか。会場をほぼすべて歩いたHelixes USAのAdam Grahamが、ファンが特に集まった作品と、日本ではまだあまり見ない売り方を紹介します。
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『NARUTO-ナルト-』 世代をまたいだファンが会場を埋めた
長く愛されてきた『NARUTO-ナルト-』は、今回のNYCCでも大勢のファンを集めていました。
主人公うずまきナルトの誕生日でもある10月10日に開かれたパネル「NARUTO: What’s Next?」は、約3,000人規模の会場を満席にしました。発表された内容もすべて初出となっており、『NARUTO-ナルト-』と『NINKU -忍空-』のクロスオーバーアニメ全4話、「PROJECT RASENGAN」と名づけられた複数年にわたるグローバルロードマップ、2027年6月のカードゲーム世界同時発売、モバイルゲームのグローバル展開、そして原作者の岸本斉史さんによる新作漫画の予告など、多岐にわたる発表が行われました。
入場できなかった人は数百人にのぼり、私もその一人でした。パネルの後、ノベルティバッグを譲ってもらい会場を歩いていると、それをどこで手に入れたのかと、何人ものファンに声をかけられました。パネルへの関心は、それほど高かったのです。

会場のフロアでも、『NARUTO』はメインホールの複数のブースに登場し、コスプレをするファンの間で非常に人気でした。
なぜここまで目立っていたのか。原作漫画の連載が1999年から2014年、アニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』の放送が2017年まで続いたことで、ファンの層が世代をまたいでいるからだと思います。この作品とともに育った大人と、最近になって作品に出会った若いファンが、同じ会場を埋めていました。大人のコレクターが多いNYCCの客層と、長く愛されてきた作品の歴史がかみ合っていたのです。

『気になってる人が男じゃなかった』 漫画から配信までの統合的な導線
『NARUTO-ナルト-』とは違う意味で印象に残ったのが、新井すみこさんの漫画『気になってる人が男じゃなかった』です。この作品は、来場者が会場を歩く動線のあらゆる場所に登場し、そのほぼすべてが漫画を手に取ることへ向けられていました。
エントランスホールには、英語版の出版社Yen Pressによる巨大なバナーが掲げられていました。会場の柱にはCrunchyrollのロゴが入ったラッピングがあり、そこでも漫画が宣伝されていました。作品のブースがあり、Crunchyrollのショーケースではワールドプレミアのトレーラーが公開されました。Yen Pressと紀伊國屋書店のブースを行き来させるスタンプラリーにも組み込まれ、紀伊國屋書店ニューヨーク店の店内でも漫画が随所で展開されていました。


「Read it on Crunchyroll」

これらの施策を一本の線として機能させていたのが、Crunchyrollの新サービス「Crunchyroll Manga」への導線設計です。漫画に興味を持ったファンは、Crunchyroll Mangaで最初の2巻を読めます。そして2027年1月8日にアニメの放送が始まると、Crunchyrollで放送に合わせて配信されるエピソードを見られます。Crunchyrollは会場で最も目立つ場所を使って、まず漫画へ興味を持ってもらうことに集中しているように感じました。読むことが見るきっかけになり、体験全体が一つのプラットフォームの中で完結する統合的な設計と言えるでしょう。
『ガンダム』 「ガンダムとは何か」から説明する
新しいファンとの出会いに最も力を入れていたのは、『ガンダム』でした。ブースに「What is GUNDAM」という大きなパネルを掲げ、1979年の『機動戦士ガンダム』から始まった日本のSFアニメであることを、映像付きで説明していました。日本のIPがどこにでもあるAnime Expoでは見かけない展示です。作品を知らない人が多いNYCCだからこそ、最初の一歩を用意していたのだと思います。

日本のIPではありませんが、新しい客との接点づくりでは、Magic: The GatheringとMarvelのコラボブースも参考になりました。QRコードからクイズに答えると、無料のスターターデッキがもらえます。ブース側は参加者のデータを集め、ファンはカードを手に入れて大喜びしていました。データ収集をゲームにしてしまう発想です。

“Whatnot” 会場とアプリで同時に開かれるライブオークション
今回のNYCCで、日本との違いを最も強く感じたのがWhatnotでした。
Whatnotは、出品者がライブ配信をしながら商品を紹介し、視聴者がその場で入札や購入をするライブショッピングのプラットフォームです。米国のライブショッピングでは最大規模とされ、トレーディングカードやコミック、フィギュアなどのコレクティブルが中心です。
NYCCでは、5,000平方フィート(約465平方メートル)を超える広さに「Whatnot Liveplex」を構えました。ショッピングモールのようにコレクター向けの店が並び、アーケード、ライブ番組、限定品、セレブリティの登場がありました。自分のブースを持たない出品者もここから配信でき、すべての番組は「Beyond the Con」としてオンラインでも配信されていました。会場に来られない人も、アプリから同じ商品を買えるわけです。Whatnotの発表によると、会場とアプリで500点以上の限定ドロップ(数量や時間を区切って売り出す商品)を用意し、規模は昨年の2倍以上になったそうです。


限定品の作り方も、コレクターの心理をよく突いています。ニューヨーク・ニックスのJalen Brunson選手をあしらった『Amazing Spider-Man #1001』のバリアントカバーはLiveplexでしか手に入らず、ブラインドボックスのフィギュアには6箱に1つの割合でレアな「チェイス版」が入っていました。会場にはeBay Liveも出展しており、ライブショッピングは今年のNYCCのはっきりしたテーマの一つになっていました。
時間と列を設計して売る
来場者の多くは、サイン会、フォトセッション、時間指定のドロップの列に並ぶことに時間を使い、限定品にお金を使っていました。印象的だったのは、その列と時間が細かく設計されていたことです。
Mass Appealは、セレブリティが登場するリリースを毎日夕方17時半から19時の90分枠に設定していました。木曜はNasやSlick Rickらによるスケッチポスター、金曜はAnderson .PaakとCordaeによる特別版のMarvelコミック、土曜はBusta Rhymesとプロデューサーの故J Dillaの作品を再構築した『Incredible Hulk #1』といった具合です。日時を区切ることで需要がそこに集中し、長い列が生まれていました。

セレブリティのサイン会やフォトセッションの参加枠が、イベントの開催前にほぼ割り振られているのも特徴的です。
VIPバッジには優先入場がつき、Superfanメンバーシップではフォトセッションやサイン会の枠を先行購入できます。ブースでのサイン会もチケット制で、ある出版社では追加のサインが1点25ドル以上もするなどプレミアム体験として設計されていました。
列そのものをオンラインに移す仕組みも広がっていて、Funkoのブースでは「待機列はオンラインにあります」という看板を出し、QRコードからバーチャルな列に並ぶ形になっていました。


日本の売り方と比べて見えたこと
NYCCの売り方を日本と比べると、三つの違いが見えてきます。
一つ目は、会場と配信を同時に売り場にしていることです。Whatnotでは、会場にいる人とアプリで見ている人が同じ商品を同じ時間に取り合います。イベントの来場者数が、そのまま売上の上限にはなりません。
二つ目は、待機時間と列を商品の一部として設計していることです。何時に何が出るかを事前に告知し、優先枠を有料で売り、列をオンラインに移す。待つこと自体がイベントの体験になっています。
三つ目は、限定品やノベルティと引き換えに、来場者のデータを集めていることです。QRコードからの購入やクイズへの参加を通じて、会場で出会った人と会期後もつながれる状態をつくっていました。
『NARUTO-ナルト-』や『気になってる人が男じゃなかった』のようにファンの多い作品ほど、会場で生まれた関心を、配信や購入、次の接点へどうつなぐかで差がつきます。
ただ、ここで紹介したのは仕組みの表側です。ライブオークションの運営や、事前チケット制の列の設計は、「会場に行けば必ずブースを体験できる」という日本の感覚とは前提が大きく違います。Anime Expoでも、先着順の列はたびたび議論になります。列や限定品をどう設計するかは、NYCCが積み上げてきたノウハウの一つだと感じました。
北米でのイベント出展から、列や限定品の売り方、会期中のブース運営まで、自社の作品で何ができそうか、Helixes USAのAdam Grahamに直接ご相談ください。お問い合わせはこちらのフォームから受け付けています。
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Text
Adam Graham (Helixes USA)
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Translation / Edit
Kentaro Okumura
Tomoya Hyodo
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