日本のコンテンツを、より広く深く愛されるものに──Helixes USA Inc.の設立によせて|志村龍之介×Adam Graham
2026.09.01
Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。
2026年7月、コンテンツIPスタジオ maxilla を擁するHelixesは米国法人「Helixes USA Inc.」を設立しました。日本のコンテンツIPやブランドの北米展開、北米のコンテンツIPやブランドの日本展開、現地でのイベントやプロモーションなど、日米のチームが連携する体制をつくっていきます。Helixes Inc.代表の志村龍之介と、ロサンゼルスを拠点にHelixes USA Inc.を担うAdam Grahamの2人が感じている北米市場の変化と、これから取り組みたいことについて聞きました。
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かつては謎の存在だった
── Helixes USA Inc.を立ち上げた背景から聞かせてください。
志村 ここ数年、日本のコンテンツIP産業のトップランナーとお仕事をさせていただく機会が増えて、その中で北米市場についてのご相談や、関連するお仕事をいただくことも増えてきました。まず、これが事業的な背景としてあります。
もう少し主観的なところで言うと、自分たち自身がアメリカから生まれたカルチャーに大きな影響を受けてきたことがあげられます。自分たちを形作ってきたマーケットに、いつか一手を打ちたいと、maxillaを立ち上げた頃から思ってきました。
そしてもう一つが、単純に友人のAdamがこの話をしたときにやってくれると言ったからです。実際、それが7割くらいを占めていると思います。
Adam 私にとっても、龍之介さんが一緒にやりたいと言ってくれたことは大きかったです。自分のアイデンティティの一部に日本というものがありますし、日本でバンド活動をしていた頃から、日本のカルチャーやエンターテインメントに関わってきましたから。

──そもそも、お二人はいつ頃から交流があったのですか。
Adam 最初にmaxillaの名前を知ったのは、私がFACTというバンドで活動していた14、15年前です。仲のいいバンドの友達からよく名前を聞いていたので、きっとすごいチームなんだろうなと思っていました。ただ、当時はどんな人たちなのか全然分からなくて、ずっと謎の存在でしたね(笑)。
ライブ会場で挨拶することはありましたが、本格的に一緒に仕事をするようになったのは2020年頃、前職でアーティストマーケティングに関わるようになってからです。その後、2025年のAnime Expoをはじめ、北米での仕事にも少しずつ関わるようになっていました。
龍之介さんからこのお話をいただいたのは、ちょうどネクストステップを考えていたタイミングでした。これまで一緒にいて楽しかった人たち、仕事をしていてやる気が出る人たちと、もう一度組める。そう思える関係性があったからこそ、このプロジェクトには取り組むべきだと感じました。
サブカルを脱した日本のコンテンツIP
── Adamさんはロサンゼルスを拠点にしています。現地から見て、日本のコンテンツIPの広がりをどう感じていますか。
Adam ロサンゼルスにいると、日本の文化が本当に生活の中に入っていると感じます。ストリーミングサービスではアニメが人気ですし、本屋に行けばマンガのコーナーが広く取られている。ショッピングモールにも日本のコンテンツIPの商品が並んでいます。また、自宅の目の前には中学校があるのですが、そこに通っているキッズも『チェンソーマン』や『呪術廻戦』のTシャツを着たりしていて、もはやニッチなサブカルチャーではないんだと実感します。
ただ、アメリカと一言で言っても、当然ながら地域によって文化はかなり違います。ロサンゼルスで起きていることが、そのまま全米に当てはまるわけではない。地域ごとの違いを見ながら、それぞれに合った形を考えていきたいですね。

── 逆に、伸びしろがあると感じるのはどのあたりですか。
Adam 私のキャリアは音楽が中心なのでその領域の話になりますが、Integrated Marketing──統合的なマーケティングという考え方を、もっと活かせる余地があると思います。例えば日本のアーティストがアメリカで公演を行う際、一つひとつの公演のマーケティングはできても、それらをつなげて積み上げていくことができていない。
日本のコンテンツ自体はとても面白く、レベルも高いし、独自性もある。それは間違いありません。あとは、最初に見つけてくれた人たちから、その先へ広がっていく道筋をどうつくるか、です。Helixesがプロジェクトに参加することによって、そのギャップが生まれないようにできるのではないかと考えています。
──日本のコンテンツ企業が北米でビジネスを展開する際、どのような難しさがあると感じていますか。
志村 日本企業がアメリカ市場に出ていく度合いや、展開するビジネスの内容は年々変わってきています。事業が多角化していくほど、現地と綿密に連携しながら設計しなければならない。連邦の法律もあれば各州によって州法もあり、税制も違う。基本的にはそれぞれ別の国だと考えるべきだとすら思います。
撮影をするにしても、イベントを開催するにしても、現地のパートナーとの連携が確実に必要になります。多くのプロジェクトを進めるなかで、このコミュニケーションコストは看過できないと痛感していますし、それが自分たちがUSに拠点を置く理由につながっています。
Adam 重要なのは、現地のパートナーと、日本から海外展開を考えるIPホルダーとの間にある理解をどうつないでいくかだと思います。Helixes Inc.は日本のIPホルダーとの関係を築いてきました。私自身も現地のパートナーとの関係を築いてきていますし、これからさらに広げていくことになります。その両方をつなぐことで、プロジェクトを進めやすい状態にしていけるはずです。
日米のあいだをつなぐ、Helixes USA Inc.の役割
── Helixes USA Inc.として、まずどのような領域に注力していきますか。
志村 まずは、日本のお客様の北米に対するニーズに伴走していくことが中心になります。現地でイベントを開催したい、より効果的なプロモーションを構築したい、北米のパートナーと連携したい。そうしたご相談から、一緒に考えていければと思っています。これまでも、日本側から北米のパートナーと連携し、コンベンションでのブース出展やアニメ作品のプロモーションに取り組んできました。そうした一つひとつの経験を積み重ねていきたいです。
中長期的には、Helixesとして日本で培ってきた技術やノウハウを活かしながら、日本のコンテンツとアメリカのファンとの接点を増やしていきたいです。どのような領域に取り組むべきかは、実際のニーズを見ながら優先順位をつけ、段階的に広げていきます。

Adam アメリカ側でできることは、日本のチームとは違います。日本にはクリエイティブチームもいますから、一緒に進める場合もあれば、こちらで新しい仕組みを整える場合もある。プロジェクトによってアプローチが変わるでしょう。
目下のところの優先事項は、プロジェクトをスタートする際の進め方のベースを固めることです。こういうプロジェクトならこのパートナーと組める、といった型を複数用意しておく。積み上げてきたものを活かすための土壌づくりですね。
── 数年後、北米でどのように認識されている状態が理想でしょうか。
Adam まずは、maxillaという名前をアメリカでも知ってもらいたいです。日本のクライアントがアメリカで何かのプロジェクトを考えたとき、まずHelixes、maxillaの名が浮かぶこと。それが、このビジネスをやっている意味のひとつだと思っています。日本とアメリカの間にある距離を、プロジェクトを進めるためのつながりに変えていく。まだこれからの部分は多いですが、日本のコンテンツがこちらでもっと多くの人に届くよう、できることを増やしていきたいです。
志村 さらに言えば、日本のコンテンツIPが、アメリカでより愛される状態をつくりたいと思っています。翻訳やローカライズにとどまらず、現地の文化の中に根づき、しっかりと受け取られていくようなイメージです。これは自分たちがアメリカの文化から影響を受けてきたことの裏返しでもあります。今度はHelixesなりの形で返していく番なのだと思っています。

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Interview
&EditKentaro Okumura
Tomoya Hyodo -
interviewee
Ryunosuke Shimura
Adam Graham -
Photo
Yasuyuki Kanazawa
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