普遍的なグッズブランドから、ファンの想いと作品に寄り添うストリートブランドへ──「PROPELLER」リブランディングの道のり
2022.12.02
Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。
Helixesと「ecforce」を提供する株式会社SUPER STUDIOが展開する、ストリートアパレルブランド「PROPELLER(プロペラ)」。2021年6月にスタートし、「次に来る作品」をテーマに様々なグッズを展開していくなかで、さらなる飛躍のためのリブランディングに着手することに。その背景にあった課題感、リブランディングでの戦略や更新されたブランド像について、プロジェクトマネージャーの梶野、アートディレクター、COOの八木に話を聞きました。
作品に火がつく速度は年々早まっている
─まずは、「PROPELLER」のこれまでの動きを教えてください。
梶野 もともとは関連会社が提供する読書記録サービス「comicspace(コミックスペース)」のデータを活用して、「”次に来る作品”をピックアップする」というテーマで始まったブランドです。スタート当初にグッズ化させていただいた作品には、「極主夫道」や「僕の心のヤバイやつ」「ぼっち・ざ・ろっく!」「天国大魔境」などがあります。いずれも素晴らしい作品で、今では映像化やアニメ化も相まって高い知名度がありますが、こうした作品への熱量に火が付き始めたタイミングからグッズを制作し、コアファンに楽しんでもらおうというのが、PROPELLERが当初目指していたことでした。
その後、大ヒットゲーム「リヴリーアイランド」のグッズも制作させていただき、大きな反響を得ました。リヴリーアイランドは約10年ほど前にブラウザゲームとして人気を博し、アプリとしてリバイバルを果たしたタイトル。そうした背景もあって、これまでにないファン層の獲得に繋がりました。
その後、ブランド自体の見直しを行い、「ダンダダン」「寄生獣」「刃牙」のアパレルやファッション雑貨をリリースしました。
─少しずつ方向性が変わっていったんですね。
梶野 そうですね。というのも、実際に事業をスタートする中で、作品を題材とした商品開発は販売にたどり着くまでにどうしても時間がかかることが分かって。取り扱う作品を検討・交渉し、デザイン、販売するまでに半年ほどでしょうか。その間に作品が一気にヒットしてアニメ化まで進む、ということが頻発したんです。そうなるともはや「次に来る作品」とは定義しづらくなってしまうなと。
─半年でそこまで変化するんですね。
梶野 本当に一気に変化が起こるんですよね。そういう点では、作品の選定自体は的確だったと思います。ただ、漫画やアニメ業界の流れは私たちの想定よりも速くなってきていて。
八木 PROPELLERというブランドの認知度が低いという事業的な課題も相まって、「”次に来る作品”をピックアップする」というブランドテーマを見直そうという話になりました。
課題と徹底的に向き合い導き出した改善点
─リブランディングはどのように進めていったのでしょうか。
梶野 前述の課題意識はチームメンバー全員が持っていたので、昨年末あたりから議論をスタートしました。PROPELLERの始動からこれまでの流れを振り返りつつ、それぞれの悩みや課題をリストアップして。ひとつひとつ打ち手や原因を話し合い、具体的な方針やネクストアクションを決めていきました。クロスSWOTやポジショニングなどのフレームワークを活用しながら、かなり充実した議論となりました。フレームワークを使用した戦略立案は立ち上げの際から行っていたことですが、改めて見直し、どの仮説が間違っていたか、どこがワークしていて、どこがワークしていなかったかなどを検証していったんです。
─その検証の結果、一番の改善点は何だったのでしょうか?
八木 一番の改善点は、やはり商品を出すまでのスピード感です。作品のモーメントに合わせて商品をリリースするのが理想ですが、製造スケジュールが遅れて絶好の機会を逃すことが多々ありました。
その理由として、私たちはどうしても万人受けする普遍的なアイテムを作ろうとしてしまっていた点にあると考えました。新規事業の立ち上がり段階であったこともあり、どうしても大勢の顧客に受け入れてほしいという思考が無意識にも働いてしまう。そこが、ブランドを伸ばしていくに当たって、ミスマッチを起こしていたかもしれないなと。なので、これからは対象とする顧客や扱う商材も絞り込み、選択と集中でスピード感を上げていく方向に舵を切ろう、ということになったんです。
商材を絞ることで、進行自体もある程度フォーマット化できます。例えばTシャツだったら作品が変わったとしても、生産過程はほとんど変わらないうえに、予算管理もしやすい。顧客を絞ることで、宣伝素材やルックのイメージに統一感を出すことにも繋がります。
「刃牙」
Tee 死刑囚「刃牙」
Tee 復活
ただ、こうしたことはほんとに当たり前のことなんですよね。顧客を定めて、商材を決めていく。ベーシックな部分を深堀りできていなかったというのが、大きな反省点でした。
顧客のペルソナを綿密に作り込む
─顧客と商材はどのように絞っていったのでしょうか?
梶野 20〜30代の男女というのは変わらないのですが、ストリートスタイルが好き、ファッション感度が高い、そして流行に敏感でおしゃれな作品グッズに購入意欲を持っている……といった具体的なイメージを持つようにしました。Helixesのクリエイティブチームであるmaxilla事業部のメンバーや、よく一緒に仕事をする身近なクリエイターさんたちがまさにそのイメージで、ペルソナをしっかりと作り上げチーム内で認識のすりあわせを行いました。
商材については、まずはTシャツ、パーカー、キャップといったアパレルに絞ることにしました。少し派生してフリスビーやラグマットなどのファッション・ライフスタイル雑貨も入れていますが、これらも顧客イメージに合わせたセレクトを行っています。
「寄生獣」
Tee 少女の夢「寄生獣」
Mingle Logo Cap「寄生獣」
Flying Disc (Pink)
─リブランディングを経て、デザイン面での変化はありますか?
AD 作品やキャラクターの魅力を引き出す、という点はこれまでと変わっていません。ただ、僕自身が企画段階から深く関われるようになったので、より作品について紐解きながらデザインができるようになってきたと感じています。作品やキャラの魅力を第一に据え、より純粋に魅力を最大化するデザインは何なのかを常に考えていきたいですね。
ガラッと変わったチームメンバーの意識
─リブランディングによって、チームメンバーの意識も変わりましたか?
梶野 ガラっと変わりましたね。自分たちのブランドやプロダクトへの愛着がすごく増したんじゃないでしょうか。社内外に対して、改めて自信を持ってプロダクトを発信できるようになったのは精神的に大きな変化じゃないかなと。
─ブランドの形が改めて明確になった効果ですね。
八木 社内のクリエイターと連携を取るときにも、自分たちのブランドに絶対的な自信がないと上手くいかなかったりしますし。チーム内での士気を高める意味でも、今回のリブランディングは意義があったと思います。関係会社に対しても我々が熱意を持って仕事ができるかは重要です。それが最終的には顧客にも伝わるのかなと思います。
作品を増やし、リアルプレイスでの販売を目標に
─数年後のブランド像はありますか?
梶野 今は各作品のファン、例えば寄生獣のファンの皆さんが「寄生獣のグッズがほしいからPROPELLERで商品を購入して下さる」という流れがほとんどだと思います。今後はそれだけではなく「PROPELLERだからほしい、PROPELLERだから好き」と言ってくれる、PROPELLERそのもののファンを増やしていきたいですね。
「ダンダダン」コレクション 「寄生獣」コレクション 「刃牙」コレクション
ビッグタイトルの作品も増えていけば、寄生獣がきっかけで買ってくださったお客様が刃牙も好きで、そこからPROPELLERのことも好きになってくれる……といった形で、良い循環が作れるんじゃないかと期待しています。
─今後の予定を教えてください。
梶野 年末にかけていくつかリリースがあります。あとはまだ詳細を言えないのですが、そのうちの一つにはビッグタイトルも含まれます。よりスピード感を持って、2ヶ月に1本程度のペースで新しい作品の商品を出していきたいですね。さらに今後は漫画のみならず、ゲームや映画など様々な作品に広げていきたいと考えています。
「刃牙」
Tee 復活「刃牙」
Long Sleeve Tee エンドルフィン
また、リアルプレイスでの販売も視野に入れています。セレクトショップと繋がりのあるメンバーもいるので、店舗での流通にも挑戦してみたいです。やはり、実物を見てもらう機会というのはお客様にとっても必要なのかなと。今はまだ作品が少ないので、どんどん増やしながら、少しずつファンを獲得していくことに集中していきたいですね。
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Speaker
Kohei Yagi
Momoyo Kajino
Art Director
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Interview & Text
Kentaro Okumura
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Edit
Rise Haneda
Kohei Yagi
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