バンダイナムコ × Helixes |キャラクターとストーリーの掛け算で楽曲の奥行きを表現。『太鼓の達人』をマルチバース化した「WADIVERSE」プロジェクト
2025.01.31
Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。
バンダイナムコエンターテインメントが展開する『太鼓の達人』発の音楽ブランド「WADIVE RECORD」。Helixesでは、同ブランド楽曲のMV制作にはじまり、24年3月からは人気キャラクターが活躍するマルチバースプロジェクト「WADIVERSE」を手がけています。そんな「WADIVE RECORD」について、バンダイナムコエンターテインメント担当者の野津美鈴氏とHelixesのメンバー3人に話を聞きました。
ーまず、バンダイナムコエンターテインメントで「WADIVE RECORD」が始まった経緯についてお教えください。
バンダイナムコエンターテインメント・野津美鈴(以下、野津) 和太鼓リズムゲームを中心とした『太鼓の達人』シリーズでは、かねてから太鼓の達人が好きなユーザーに向けて「ナムコオリジナル」という枠組みで膨大な数のオリジナル曲を制作してきました。そんな中で、2022年頃から社内で「『太鼓の達人』『ナムコオリジナル』の新しい顔を見せたい」といった声が挙がるようになり、ユーザーの方が親しみやすいようキャラクターとビジュアルを合わせながら、YouTubeを活用したプロジェクトとして「WADIVE RECORD」をスタートさせました。
https://taiko-ch.net/wadiverecord/
その最初の楽曲が、2023年3月にYouTubeで公開した「スキに理由はいらないじゃん!/オミコシスターズ feat. Ponchi♪」です。これは『太鼓の達人アニメば~じょん!』から生まれたアイドル・オミコシスターズがYouTubeで展開していた番組『ミコシスラジオ』で、ユーザーからコンセプトや歌詞を募集して制作したもの。この「スキに理由はいらないじゃん!」のMV制作にあたって、社内からHelixesのクリエイティブを推す声があり、22年末頃に相談させていただきました。
Helixes・中瀬(以下、中瀬) 初回はイメージをヒアリングしつつ、女の子2人組のアイドル・オミコシスターズのキャラクターをしっかり見せながら、可愛らしさやダンスを意識した提案を行いました。振り付けがあるMVが流行っていた時期でもあったので、イラストレーターさんのテイストを活かしつつ踊れる振り付けをMVに落とし込んでいきました。
ーそこから、2024年3月には「WADIVERSE」プロジェクトをスタートさせています。このプロジェクトを提案したのがHelixesだったと。
野津 「WADIVERSE」は『太鼓の達人』のメインキャラ・どんちゃんがさまざまなバース(世界)を旅して、バースごとに少し変化したキャラクターやストーリーを楽しんで音楽を紡いでいくプロジェクトです。楽曲やMV以外にも、SNSでの情報発信やマンガ、イラストの投稿を通じて、それぞれの世界観を展開しています。
「WADIVERSE」の経緯としては、「スキに理由はいらないじゃん!」の制作後、Helixesさんとまたご一緒したいとは思いながらも、具体的な話がなかなか決まらなくて。そんな中、Helixesさん側から「どんちゃんがバースを練り歩きながら、キャラクターの新たな魅力を見せる」という企画の提案をいただいたんです。これが社内でも好評で、実施へと動き始めることになりました。
中瀬 「スキに理由はいらないじゃん!」の制作は「WADIVE RECORD」立ち上げのタイミングでもありましたし、もしかしたら私たちにお手伝いできることがもっとあるのではと、なかば勝手に企画書を持っていった感じだったかもしれません(笑)。
ーWADIVERSEのマルチバースというアイディアはどのように生まれたのですか?
中瀬 提案を練る際に大事にしていたのが、「『太鼓の達人』を遊んでもらうことをゴールにする」ということでした。WADIVE RECORD 自体が立ち上がったばかりということもあり、楽曲だけではゴールに結びつくタッチポイントが十分ではないのでは、と。そこで『太鼓の達人』というIPが持つ強みでもある、どんちゃんを始めとしたキャラクターを活かした施策ができないかと考えたんです。
さらに、ボカロやVTuber、歌い手といったインターネットの音楽を中心にしつつも、少し違った方向性の楽曲をあえて入れることで、幅広く音楽を楽しんでもらえるような、自由度の高いマルチバース企画を提案させていただきました。
野津 「WADIVERSE」は学生やZ世代に刺さることを意識して制作しています。『太鼓の達人』は演奏ゲームなので、ゲームを遊んでいただくだけではキャラクターの設定をしっかりとユーザーに伝えるのが難しい。それが「WADIVERSE」ではバースごとに少し変更を加えながらもキャラクターを深堀りでき、シリーズとして見てもこれまでにない取り組みになっています。
ーHelixesがプロデュースしている楽曲についても、どのように制作されたのか教えてください。
野津 音楽は基本的にはHelixesさんに一任させていただきましたが、『太鼓の達人』開発チームと一緒にラフや歌詞を確認しながら、ゲームとして明るくしたい箇所や、テンポの調整のリクエストはお伝えしました。また、これまでのユーザーにも喜んでもらえるポイントとして、ゲームとして叩いて楽しい楽曲になっているかも重視しています。
Helixes・石居(以下、石居) その点で言うと、短い尺の中でも複雑なパートを入れるなどの展開をつけたり、ゲームで叩く譜面にしたときに楽しくなるよう意識してプロデュースを行っています。またファンとの親和性の高い仕上がりになるよう、ゲームやインターネット界隈の音楽に精通した作家の方にご協力いただきました。
野津 もともとゲーム性を意識していただいていましたが、結果としてキャラクターの魅力とゲームとしての楽しさ、その両方の良いとこ取りができたプロジェクトになったと感じています。
ーHelixes側では、WADIVERSEプロジェクトをどのように制作していきましたか?
Helixes・羽根田(以下、羽根田) 私はプロジェクト全体の制作進行と、社内のプロジェクトメンバーと協力しながら、「WADIVERSE」のキャラ設定や脚本構成もメインで考えさせていただきました。
中瀬の話にもあったとおり、ゲームをプレイすることが最終的なゴールなので、ゴールを起点にどんな楽曲ジャンルにするのか、またそのジャンルならどのキャラクターを登場させるのがいいのかを『太鼓の達人』のキャラクター一覧を見て検討しました。野津さんたちからもご提案いただいたり、その都度意見交換しながら進めていった形です。
例えば、「ピコピコアーケード」をテーマにしたエピソード3では、ネコと杓子というキャラクターを登場させることにして、「猫耳」などのウケる要素とのバランスを見ながら試行錯誤しつつ詰めていきましたね。
エピソード1はストレートに音楽がテーマの「バンド」でしたが、それ以降はただ音楽ジャンルを変えていってもストーリーとして単調になってしまうので、エピソード2はファンタジー世界にしてみたり、エピソード3もキャラクターが演奏する楽曲ではなく、エピソードのテーマソングをイメージしたりと、楽曲の立ち位置自体を変えることで、いろんな層に刺さるよう意識しています。
野津 マルチバース展開はこれまでの『太鼓の達人』にはない試みだったので、最初はチームメンバーに説明してもピンと来ない人のほうが多かったです(笑)。今では開発チームから理解や応援を得ていますし、ときには開発者たちから新しいエピソードのアイデアを言ってもらうこともあります。
ー「WADIVE RECORD」のプロジェクトを通じて、野津さんから見たHelixesの印象をお教えください。
野津 本当に若い世代に刺さるクリエイティブを制作される会社だな、と感じています。実は初回打ち合わせの前まで、新進気鋭でオシャレなイメージが強く、すごく尖った人たちが来るんじゃないかと緊張していたんです(笑)。ただ、実際にお話をさせていただくと、すごく相談しやすい雰囲気で安心したのを覚えています。
中瀬 そのギャップについてはいろんな方から言われます(笑)。
野津 以来「WADIVE RECORD」で2年近くご一緒させていただいていますが、常に『太鼓の達人』への理解やリスペクトを持って取り組んでいただいていることがわかるんです。「このキャラクターはこういうことを言いそうですよね」といった提案をいただくときなどは、作品へのリスペクトの深さをとくに感じます。
ー最後に、「WADIVE RECORD」プロジェクトにかける思いや今後の展望についてお教えください。
中瀬 今は音楽だけじゃなくゲームやイラスト、マンガや映画、YouTubeやSNSにまで魅力的なコンテンツが溢れています。そうした中で、我々Helixesが長い歴史を持つ『太鼓の達人』に関われることはとても光栄ですし、やるからには既存の文脈とは少し異なるエッセンスを残せたらと思っています。
ストーリーはもちろん、参加してもらうアーティストさんやクリエイターさんもこれまで同様に力を入れていきますので、今後の展開も楽しみにしていただけると嬉しいです。
羽根田 まだ「WADIVERSE」に登場していないキャラクターもたくさんいるので、既存ユーザーの方は楽しみにしていただければな、と。今後もいろいろな世界観を見せることで、これまで『太鼓の達人』にあまり触れてこなかった方にも届けられるよう、作品の間口をどんどん広げていきたいです。
石居 小さい頃から『太鼓の達人』をプレイしていたミュージシャンやアーティストの方もたくさんいて、みなさん完成したMVやゲーセンで自分の曲が使われているのを見てすごく喜んでくれるんです。そのこと自体が嬉しいですし、これからも一緒に格好いいモノを幅広いジャンルのアーティストと一緒に作っていきたいですね。
野津 「WADIVE RECORD」では、引き続き「『太鼓の達人』『ナムコオリジナル』の新しい顔を見せる」という軸はブラさずに、クリエイティブをたくさん作っていきたいと思っています。中瀬さんが言うように現代は膨大なコンテンツが流通していますが、しっかりとトレンドを押さえながら運営していくつもりです。
ちなみに次に公開されるエピソード4では、『太鼓の達人』ファンの間でバズったコンテンツを元にしたテーマを予定しているので、そちらもぜひご期待ください!
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Speaker
Misuzu Notsu
Mizuka Ando
Shiho Nakase
Yudai Ishii
Rise Haneda -
Interview & Text
Michi Sugawara
Kentaro Okumura -
Edit
Kentaro Okumura
Kohei Yagi
Hanako Yamaura
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