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リスペクトは作品を深く知ることから──maxillaがIPと向き合ううえで大切にしているもの

2026.10.13

maxillaは、コンテンツIPスタジオとして、他社の作品をお預かりする案件から、新しいIPの立ち上げまで、さまざまな形で作品に携わっています。そのひとつが、集英社さまと共同で立ち上げ、maxillaが原作を作り上げたのが、『ONE PIECE』のチョッパーがわたしたちと同じ世界でくらす姿を描いた『CHOPPER's(チョッパーズ)』です。ローンチから約1年が経ったいま、立ち上げに携わった平嶋と梶野に、作品と向き合ううえで大切にしていることを聞きました。

──CHOPPER’sの立ち上げにあたって、とりわけ気を配ったのはどんなところでしたか。

平嶋 立ち上げでまず大切にしたのは、新しい一面を加えても、CHOPPER’sの振る舞いによって『ONE PIECE』のファンが決して離れてしまわないようにすることでした。まずこれが大前提にあり、受容性の面でもいくつか意識しています。例えば、グローバルに展開するIPなので、人種や宗教、肌の色が特定されない見え方にすること。原作のチョッパーが持つ印象から離れないこと。そして、いらぬヘイトを生まないように描くこと。言いかえれば、世界中の誰が見ても安心して好きになれる存在であること、などです。

──具体的に形にしていくうえで、最初に取り組んだのはどういったところからだったのでしょう。

平嶋 まずキャラクターデザインから取り掛かり、次に表情をつくりました。本編のチョッパーは、彼の生い立ちやストーリーの結果を経て、読者が納得できる性格になっています。過去の様々な出来事を乗り越えたから今はこうなっている。だからこんな発言をするんだ、というのが、分かりやすく描かれています。でも、CHOPPER’sから初めてチョッパーを知った人は、そのエピソードを知らない人も多いはず。だからこそ、本編を知らなくても人となりが伝わるように、と考えました。CHOPPER’sのチョッパーは言葉を話さないので、頑張る姿やお茶目な仕草から、らしさが伝わるよう意識しています。

── キャラクターデザインについての基準はありましたか。

平嶋 ここは明快で、「ぬいぐるみになったときに可愛く見えるかどうか」を基準にしています。だからアニメ版のチョッパーと違って、腕と手のひらがつながっています。綿を入れたときに、手がふっくらして可愛く見えるので。また、ローンチ時のキービジュアルでリュックを背負って座っているのも、ぬいぐるみになったときに自立できるから。何を、どういった層に届けたいのか。目的が先にあって、かたちはその逆算で決めていきました。

── では「現実世界で暮らす」という設定は、どこから生まれたのでしょう。

平嶋 我々として大切にしたのは、CHOPPER’sのチョッパーが「なぜそこにいるのか」を説明せずにすむ設定にすることでした。空想の世界を舞台にすると、どうしてもその理由づけが必要になってしまいます。あくまで私たちの狙いは、CHOPPER’sを『ONE PIECE』に接続すること。CHOPPER’sから彼を好きになった人たちが、原作に手を伸ばしてくれるのが理想です。そのため、予備知識がなくても入っていける、わたしたちと地続きの世界にしました。チョッパーは実際にそこで暮らし、出かけ、自分で発信している。読む人も、ひとつづきの世界として自然に楽しめます。

── ローンチから約1年が経ち、社内やブランドにはどんな変化がありましたか。

梶野 両面で変化を感じています。原作があるとはいえ新しいIPを一から運用していく経験は社内でもまだ多くありませんでしたが、どういう状態がブランドのためになるのかを問い続けてきて、その積み重ねが自分たちにとっても貴重な財産になっています。

ブランドの面でも、最近は広がりを実感する場面が増えました。先日訪れたある居酒屋で、店員さんがみんなCHOPPER’sを知っていたんです。これまで『ONE PIECE』に触れてこなかった方にも届きはじめていて、原作への入り口になりつつあるのであれば嬉しいな、と。

──他社の作品をお預かりする案件では、どんなことを大切にしていますか。

平嶋 原作や設定資料を読み込んだり、チーム内でのすり合わせといった土台づくりは、当然のこととして丁寧に固めていきます。そのうえで私がいちばん大切にしているのは、ビジネスの話をいったん脇に置いて、いちファンとして面白い企画になっているかどうか、という点です。原作を何も知らない小学生になったつもりで見て、これって面白いのか? と。最適解に寄りすぎて、かえって面白さが失われていないか。ファンが本当に喜ぶものになっているか。そこは、いつも立ち返るようにしています。

梶野 私は今まで、MEQRIというブランドでライセンスをお借りして商品を作る機会が多かったのですが、まず大切にするのは、お預かりしたデータを丁寧に扱い、原作の世界観を忠実に守ることです。そのうえで、ファンがどんな人で、どんな商品なら買いたいと思ってもらえるのかを可能な限り読み解いて、企画に反映しています。

平嶋 結局、独りよがりの仕事はしない、というところかなと思っています。言われたとおりにやるのも、やりたいことだけを通すのもできるかもしれない。正直、そのほうが楽です。でも、ファンも、クライアントの方も、自分たちも、みんなが心から喜べるようなポイントをなんとか探したい。一緒に組んでいただける以上、次もまた声をかけてもらえる相手でありたいな、と常々思っています。

── ファンの人物像やペルソナは、どのように把握するのでしょう?

平嶋 私がよくやるのは、その作品のファンになりきって、SNSのアカウントを作ることです。同じファンの方をフォローしていくと、タイムラインがどんどん染まっていき、普段どんな投稿を見て、どんな話題に惹かれているのかの輪郭が見えてきます。作品ごとにアカウントを作っているので、もう何十個もあります(笑)。Xだけでなく、LINEやDiscordといった閉じたコミュニティものぞいていて、クローズドならではの話題の伝播も見られます。そうやって憑依するようにアカウントを作ることで、ファン像がだんだんと具体的に立ち上がってきます。

── 平嶋さんはもともとはライツ側としてのキャリアもあると伺いました。これまでのキャリアを簡単に教えていただけますか。

平嶋 もともとはIPを生み出す側にいました。ボーカロイドや、漫画・アニメのキャラクターコンテンツ。さらに前は、同人ゲームや音楽まわりの仕事をしてきて。どれも答えのない世界で、どうすれば面白くなるか、ファンが喜ぶか、突き詰めれば自分自身がのめり込めるかを考え続けてきました。趣味の延長で始めて、maxillaに入るまでにおよそ10年。後半の5年ほどは版権を管理する側として、自分たちのキャラクターの扱い方をリクエストする立場を経験しました。

── その経験は、いまの仕事にどう生きていますか。

平嶋 版権を管理する側にいた頃、もどかしい思いをしたことがあります。作品そのものへの理解がないまま、ただ話題になっているからというだけで依頼を持ち込まれる……そういう相談が少なくありませんでした。作品にもファンにも関心のない提案って、受け取る側にはすぐ分かるんです。だからHelixesでは、まず作品を知り、ファンを知る。そのうえで提案することを、何より大切にしています。当たり前のようですが、これがいちばんのリスペクトだと。そうして「ここなら任せられる」と感じてもらえることが、何よりうれしいですね。先日も、あるカードゲームの企画で新ルールを聞いた瞬間、その変更が試合の勝ち筋にまで及ぼす影響を口にしてしまって。カードゲームオタクっぽく喋っちゃったな…と思ったのですが、「ここまで分かっているなら…!」と、むしろその後の仕事につながりました(笑)

── 梶野さんから見て、平嶋さんのような人がチームにいる強みはどこにありますか。

梶野 強みは、やはり平嶋さんの「筋道の立て方」だと思います。作品の文脈をよく理解していて、しかもライセンサー側にいた経験があるぶん、クライアントの気持ちが本当によく分かる。次に何を望み、何を避けたいか。それを社内でいちばん見通せている人だと思います。その読みの確かさがあるからこそ、Helixesも少しずつ作品をお預かりできるようになってきました。

平嶋 とはいえ、私ひとりの話ではありません。様々なオタクたちが社内にはたくさんいます。会社自体がカルチャーを愛していて、ファンの声に耳を傾ける土壌がある。そういう人が大勢いることが、やはり大きいと思います。

梶野 漫画にかぎらず、それぞれが好きなジャンルを持っているため、社内全体でカバーできている範囲がかなり広いです。ご相談をいただいたときに、「これは、あの人に聞こう」とすぐ動けることが、組織としての強さなのかなと思います。

  • Edit

    Kentaro Okumura
    Tomoya Hyodo

  • Interview

    Shintaro Hirashima
    Momoyo Kajino

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