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視線を奪い、感情に刺す。5つのクリエイティブプロジェクトに見る、maxilla流演出メソッド

2026.05.22

Helixes Inc.のメンバーやマインドについて発信していく「Helixes.log」。今回取り上げるのは、maxillaが手がけた5つのクリエイティブプロジェクトです。MV、ライブ、没入型の展示——扱うメディアも規模も異なる仕事に見えますが、見る人の感情に深く届く体験へと結実している点に共通項があります。そこに通底するmaxilla流とも言える独自のメソッドを、担当した4人のディレクターへのインタビューをもとに、事例から紐解いていきます。

Midnights / テレビ東京 / 2022年3月

テレビスタジオで、MVを作る。その発想から生まれたのが、2022年にテレビ東京・BS TV Tokyo 7chの深夜枠で放送された音楽番組「Midnights」です。放送時間は24時過ぎ。アーティストが自らプレイリストを制作する30分間のライブ番組で、「夜に心地よく流し見できるストーリーコンテンツ」として設計されました。各回はドラマパートから始まり、ライブだけに終わらない構成になっています。

※本映像は、ドラマパートがカットされたバージョンです。

MV水準の映像を作るためには、事前に照明の変化やタイミングを字コンテで作り、テクリハを繰り返して1秒単位で詰める必要があります。撮影では「疑似マルチ」を採用。生演奏を1度収録したあと、同じ音源を流しながらカメラ位置を変えて複数回撮影することで、口パクでは生まれないライブ感を保ちながら、MVに近いカット数と多様なアングルを生み出しました。


WONK | DEEP DIVE: online – GHOST IN THE SHELL – / LIVE / 2025年4月

講談社による新作TVアニメーション『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の発表に合わせて制作された、WONKのオンラインライブです。どこを見ても攻殻機動隊とわかること——それが、演出の軸でした。

TOKYO NODEは40階以上に位置し、ステージ背後には東京の夜景が広がります。設置されていたLEDはピッチが粗く、精細な映像表現には不向きな環境でした。ただ、黒背景の映像素材を流してみると、グラフィックが空間に浮かび上がり、隙間から夜景が透けて見える。この画が電脳空間やAR的なUIを連想させると判断し、そのまま演出に組み込みました。演者の逆光は、ゴボ(模様付きの光)をステージ前方に足すことで解消しています。


coldrain「CHASING SHADOWS」/ Music Video / 2025年8月

coldrainがこの曲に込めたテーマは「無限の可能性に向かって走り続ける」というものでした。maxillaはまず曲と歌詞を受け取り、アーティストがその言葉に込めた意味を読み解くことから始めます。疾走感と壮大さを表現するために選ばれたのが、砂浜という広大なロケーションでした。

演出の軸はシンプルです。バンドのパフォーマンスを主役に据え、照明・ステージ・衣装はそこへのアドオンとして機能させる。採用した「ファイバービーム」は、一般的なレーザーと異なりカメラのセンサーを損傷するリスクがなく、至近距離でビームを走らせるアングルを可能にします。海岸特有の砂埃や潮風はスモーク効果を補強し、光の筋をより際立たせました。 

また、屋外の過酷な環境では、機材セッティングや天候の制約から、十分なリハーサルを組むことができません。その分、照明指示表を徹底して作り込み、照明技師との緊密な連携で本番に臨みました。


Official髭男dism「Make Me Wonder」/ Music Video / 2026年1月

Official髭男dismからのオーダーは「LED BOXの中で撮りたい」というものでした。それを受けてmaxillaが楽曲のタイトルから着想し提案したのが、「ラスサビでの開放」という構成です。

序盤から中盤はボーカル寄りのショットを多用し、狭いLED BOXの中でのパフォーマンスという印象を作る。ラスサビでカメラを引き、背面一面の映像を一気に解放する。楽曲の盛り上がりと空間のスケール感がシンクロした瞬間、「Make Me Wonder(ワクワクさせる)」というタイトルの意味が結実します。ポストプロダクションでは映像を引き伸ばす合成を加え、実写だけでは届かない奥行きを持たせました。


Eve Experience Live 2025「蒼像」/ 展示 / 2025年3月〜4月

表参道ヒルズ スペース オーで開催されたEveの没入型展示。MVの世界をなぞるだけでなく、アーティスト・Eveの思考や視点そのものを体験させることを目指しました。Eveは自身のライブでMVのキャラクターや世界観を大切にしてきたアーティストで、この展示はその延長線上として企画されています。

最も重視したのは「どこを通って何が見えるか」のコントロールです。次の空間が見えるとどうしても没入しづらくなるため、高い壁でエリアを分断し、通り抜けた先に次の景色が現れる導線設計を心がけました。また、人が適切に認知できる距離感は、ミリ単位でパースに起こして検証しています。

 入り口はアルバム『Under Blue』を象徴する青い空間から始まり、開放的な白い部屋へ。Eveのライブステージを再現したエリア、創作時の思考を表現したボックス展示、MVに登場する電車のセット、制作部屋を模した空間へと続きます。最後はその興奮が冷めないまま物販・キャッシャーへと流れるというゾーニングになっています。


コンテンツIPへの愛と文脈理解」を大切にするmaxillaが、躍動感のある映像演出と空間づくりを通して、見る人の感情に深く刺さる体験をどのように生み出してきたか、4人のディレクターの視点から紐解いてきました。MVやライブ、没入型の展示にとどまらず、手がける領域はさらに広がっています。

今後も紹介していきますので、楽しみにお待ちください。

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  • Edit

    Kentaro Okumura
    Tomoya Hyodo

  • Interview

    Aiko Hinokuma

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