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monopo Tokyo × maxilla |会期中もファンの反響を受けてアップデート 『Eve Experience Tour 2024「再邂(さいかい)」』を成功に導いたチームの力

2024.05.16

Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。

2024年2〜4月にかけて開催された、アーティスト・Eveの国内初の展示会施策『Eve Experience Tour 2024「再邂(さいかい)」』。今回は、本プロジェクトを手がけたmaxilla事業部プロデューサーの鈴木聖也、アートディレクター・松野貴仁、アシスタントプロデューサー・村上大河、そしてプランナー&コピーライターを務めたmonopo Tokyoの宮川涼氏にプロジェクトの経緯から企画内容など、実現に至るまでを伺いました。

既知のものと再び邂逅する

『Eve Experience Tour 2024「再邂」』を手がける経緯を教えてください。

鈴木 きっかけは、別件でご一緒したアニメーション作家のマネージャーさんから、maxillaにご相談いただいたことでした。そのマネージャーさんは、NTTドコモ・スタジオ&ライブに所属されている方なんです。今回、NTTドコモ・スタジオ&ライブ主催でEveさんの展示イベントを開催するにあたって、企画コンセプト立案とそれに紐づくアウトプットのアートディレクションを依頼されました。maxillaでEveさんの案件を手がけるのは初めてだったので、お話をいただいて嬉しかったです。

このプロジェクトでは、クリエイティブプロデューサーとして、僕がまずスコープ整理をし、そこからクオリティ管理や予算管理などを担当しました。アートディレクションは松野に、アシスタントプロデューサーには村上に入ってもらいました。

村上 僕はこのプロジェクトがスタートした2023年11月にmaxillaに入社して、鈴木のアシスタントとして進行管理などを担当しています。以前のキャリアは映像のプランナー、ディレクターとして企業のコンテンツ制作に携わっていましたが、一発目のプロジェクトでカルチャー色の強い仕事をやらせてもらえて良い刺激になりました。

鈴木 コンセプトワークは、今回同席いただいているmonopo Tokyoの宮川くんにお願いしています。宮川くんはこれまでも一緒にMVの仕事をしたり、飲みの席で話をする中で、人となりやインプット量の膨大さを知っていました。何か一緒にアウトプットできるような仕事をしたいと考えている中、音楽関連の仕事も多く手掛けている実績もあったので、本プロジェクトがベストだとお声がけしました。

宮川 monopo Tokyoはクリエイティブエージェンシーで、普段の仕事はmaxillaと近いところがあります。今回は、企画やコピーライティングで携わらせていただきました。もともと聖也くんとも知り合いでしたが、ちょっと前にmaxillaがX(Twitter)で「仕事仲間募集」のポストをしてたので、真面目にDMで「一緒に何かコンテンツ系のやりたいです!」って送ってたんです。それでこの仕事が決まったというわけじゃないんですけど、DM送っておいて良かったなぁって(笑)。

今回のコンセプトである「再邂」が決まるまでに、どのような議論がありましたか?

宮川 まず最初のブリーフィングで、今回はEveさんの過去のライブである「虎狼来(ころろん)」と「花嵐」で用いられた衣装や素材などを展示すると伺いました。ただ、そうするとコアファンであるほど、展示物を「見たことがある」というジレンマが生まれてしまう。そこから、ただ素材を展示して前見たものをもう1回見るのではなく、新しい気持ちで再び出逢ってほしいという意味を込めようと、ワーディングしていきました。Eveさんの作品は日本語で漢字2文字のモノが多いという文脈も踏まえて、“再会”の“会”を“邂逅”の“邂”にした「再邂」が出てきた。字面も格好良いし、込めたい想いにも沿ってるし、maxillaチームとも話し合った上で決定して、初期衝動のまま最初のブリーフィングから迅速に提案資料が完成しました。

松野 宮川くんが作った提案資料でチーム全員が納得感を持てたし、キービジュアルやアートワークもすぐに浮かんできました。「再び邂逅する」ということから、既知のものを新しいカタチでアウトプットする、デストロイ&リビルド的な考え方で、Eveさんのこれまでのライブツアーのグラフィックやグッズなどを再構成しようと。シンプルな背景にグラフィックがコラージュされて、いろんな思いが交錯しているようなキービジュアルにしました。提案資料があがってきてから、キービジュアル完成までもスピーディーに形にできました。結果的に、このキービジュアルは初稿がそのまま最後まで使われています。

鈴木 宮川くんからあげてもらったコンセプトがすごく良かったので、先方に提案する際はビジュアルに落とし込んで、コンセプトとビジュアルの一貫性をしっかり見せたほうが良いと判断しました。2人のおかげで迅速にプレゼン資料が出来上がって、NTTドコモ・スタジオ&ライブはもちろん、Eveさんの事務所や本人からもすぐにOKをいただけました。

最小のチーム編成で多くの施策を実現

「再邂」というコンセプトが決定した上で、具体的な展示空間としてどのように落とし込んでいきましたか?

宮川 まずコンセプトメイキングの段階で、来場者がただ受身となる「展示会」ではなく、インタラクティブになることで会場に没入するような体験を提示したい、という想いから「Experience Tour」と名付け、本イベントの目的としてファンの熱量を上げる「モチベート」と話題を広げていく「認知拡大・新規獲得」を設定しました。

この目的の両方を満たす形で、イベント内外で人に見せたくなるようなネタ、面白い体験をたくさん入れましょうと話をして、基本的にはすべて「再邂」というコンセプトに紐づけて、10個くらいの案を持っていったと思います。僕は良くも悪くも展示会に携わるのは初めてだったので、展示会の常識がなくて好き勝手あげさせてもらいました(笑)。結果として、ライブグッズをリメイクした「一点モノのオートクチュールウェア」や学生が日常的に使える「ステーショナリーグッズ」、Eveさんの楽曲を2曲を使った「マッシュアップのテーマソング」といったさまざまな企画を実現できました。

鈴木 めちゃくちゃ良いアイディアばかりでしたよ。個人的には全部やりたいくらい。企画の採択自体はクライアント側に委ねていましたが、フィジビリティ(実現可能性)の低い案もありませんでしたし、かなり多くの案が採択されました。

本イベントの実現に向けて、注力した点や苦労したことなどはありますか?

鈴木 施工や進行管理などを含め、スピード感を持って実現にまで持っていくところにはだいぶ力を入れました。maxillaチームは少人数で小回りも効きますが、関係各所とも交渉したり足並みを揃えていかないといけないので。そのあたりは村上の功績ですね。

村上 進行管理は僕の担当で、途中からEveさんのマネジメント会社の方とも直接やり取りをさせていただき、よりスピーディーに動かせるようになりました。関係各所が気になっている部分は説明し理解していただくことで、懸念を解消することに注力しました。

僕自身、展示会案件を手がけるのは初めてでしたが、いろいろな方に文脈を理解していただいて実現までつなげるというのは、前職の映像ディレクターとも共通する部分があると思いました。チームでモノを作っていくという部分も同じだったので、わりと早く慣れることができましたね。

松野 村上は、今回のプロジェクトの影のヒーローって感じです。僕でいうと、今回、会場は東京・名古屋・大阪・福岡のタワーレコード内の催事場と決まっていました。スケジュールの都合などもあり、僕自身で会場に合わせて空間のパースを作ったり、限られたスペース内で「再邂」というコンセプトを最大限に表現できるよう注力しました。ライブ写真のコラージュや人間大ほどの迫力あるグラフィックを全会場共通のトンマナの軸としておきながら、宮川くんが考えてくれたコンテンツをみんなが楽しめるような最適な形で配置していくことで、これまでファンがEveさんに関わって見てきたものと目新しい何かがミックスされた空間を作っていきました。

観客のリアクションを受け、常にアップデートを図る

『Eve Experience Tour 2024「再邂」』は2月の福岡を皮切りに、4月の渋谷まで約2ヶ月開催されましたが、反響はいかがでしたか?

松野 お客さんはかなり楽しんでくださっていたようです。イベントのエゴサーチをして面白かったのは、Eveさんのライブ衣装を着たトルソーの近くに柱状の鏡のオブジェがあって、お客さんはその鏡を使って衣装とのツーショット自撮りが撮れるって盛り上がっていたこと。これは想定外の楽しみ方で、最初の福岡会場でそういう需要があるとわかったので、次の会場からはそれを反映していきました。少数精鋭だったからこそ、すぐにアップデートを仕掛けることができたのかなと。

宮川 僕も会期がスタートしてからはエゴサーチして、後からでも何か企画がプラスできるように考えていたんです。ほかにもお客さんの反応に影響された企画でいうと、会場内には10ヶ所ほど電話番号が隠してあって、その番号を見つけて電話をかけるとEveさんの「再邂」コメンタリーを聞けるという施策があります。もともとの想定では「1ヶ所でも見つけたらあとはもう探さないのでは」と思っていましたが、SNSを見ると「何個見つけた」とか「再訪して全部見つけた」という反応も多くあった。これを受けて、電話番号を2種類用意して急きょ開催地域に関するコメントを収録させてもらい、「再邂」コメンタリーと開催地にまつわるコメントという隠し要素を入れました。

また、東京・渋谷会場は最後の開催地ということもあって、入口のパネルを大きな寄せ書きエリアに変更しています。来場者の方がたくさんメッセージを書いてくれましたが、ある日、Eveさんがゲリラ的に寄せ書きを覗きに来てくれたみたいで。ファンの熱量がアーティスト本人に直接届くコンテンツが出来たというのは、すごく嬉しかったです。

─Eveさんご本人からも何かコメントなどはありましたか?

鈴木 渋谷会場の開催前チェックには現場に来ていただき、「めちゃくちゃ良いです」と言っていただけました。会期中にEveさんが来場するのは僕らも予期していなかったんですけど、そのこと自体が良い評価の表れだと捉えています。

松野 Eveさんには、MVやアートワークを含め、ご本人のクリエイティブの角度が人を惹きつけるものがあるのだろうと思います。本人がゲリラ的に会場を訪れるというのも、顔出しをしていないアーティストとしての特性を上手く活用して、ファンとコミュニケーションしている。自身の思い描く世界観とアーティスト活動の両立ができているのは、シンプルにすごいですよね。

最重要はプロジェクトのスタート地点

最後に、『Eve Experience Tour 2024「再邂」』を振り返っての思いやプロジェクトを通じて得た気づきを教えてください。

松野 これまでも展示関連の案件はありましたが、ここまで少ない人数で、会期中の反響までをフィードバックして作っていく企画は初めてでした。それでも、『Eve Experience Tour 2024「再邂」』を通じて、今まで積み上げた経験によって相当なスピード感で作り上げることができる、という実感を持てました。今回の成功は、今後もオン/オフライン問わず意欲的で複合的な施策を仕掛けていく上での非常に良い例になったと思います。

宮川 僕自身、Eveさんが好きなので本プロジェクトに関われたのはすごく嬉しかったですし、単純にアーティストの展示会には憧れがあったので、初めて手がけることができたのも感無量でした。『Eve Experience Tour 2024「再邂」』では、初回に提案したコンセプトやネーミング、アイディアの道筋がキレイに整って実施までストレートに繋げられたことはプランナー冥利に尽きます。

そして、展示会を手がけるのは初めてでも、企画やアイディアの力というのはいろいろなモノに応用できるのだと改めて実感しました。初めてでも、経験豊かなmaxillaチームと組めばこれだけ上手く実現することができるんだな、と、チームの大事さも感じましたね。

村上 僕はmaxillaに入社後すぐの仕事で、最初は慣れるまで戸惑った部分もありました。でも、クオリティの高いアウトプットをスピーディーに出せるチームだったので、クライアントや関係各所に理解してもらう工程はやりやすく、気持ちよく仕事ができました。今回のように、クライアントだけでなく、アーティストやそのマネジメントの方々とも並走し、出来上がったモノが世の中に広がっていく様子を内部で感じられたのはとても面白かったです。今後も、こういう仕事をどんどんやっていきたいですね。

鈴木 話しながら振り返ってみて思うのは、やっぱり出だしが大事ということです。チームについて、松野とはずっと仕事をしてきて、あげてくるものに関しては絶大な信頼をおいています。村上は入社間もないけれど、最初の現地調査の段階での動きを見て背中を任せられると感じました。ずっと一緒に仕事をしたかった宮川くんも、最初のコンセプトメイキングの段階で、既存素材の展示というある種の“制限”を上手く利用したところが本当にさすがだなと。単純にチームが良くて、僕の仕事はもう人員の采配が決まった時点で終わったんじゃないかと思えるくらいです。

あとは、宮川くんが「Experience Tour 2024」というフラグを立ててくれたので、「Experience Tour 2025」につなげていくのがこれからの僕の役割でもあると思っています。

松野 今回はある意味、制限を上手く活用して、制限と戦った部分も大きいと思うので、次はぜひ無制限の展示で!(笑)

宮川 まぁ、制限のある中にこそって言うじゃないですか(笑)。僕は、次回やるとしても「再邂」より良いコンセプトを出せるのか……ちょっと不安でもある。

鈴木 自分の叩き出した良い記録がプレッシャーになってるんだ(笑)。

  • Speaker

    Ryo Miyakawa
    Takahito Matsuno
    Seiya Suzuki
    Taiga Murakami

  • Interview & Text

    Michi Sugawara

  • Edit

    Kentaro Okumura
    Kohei Yagi
    Kanako Himeno

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