ロボットアニメ、SF映画、JRPG。各国での滞在を経て選んだ日本の地で向き合う、自らのオリジナリティ|Charles(maxilla・ディレクター/デザイナー)
2024.02.16
Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。
maxillaでディレクター/デザイナーとして活躍するCharlesは、中国に生まれ、イギリスの美大を卒業後、日本でグラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタート。その後、maxillaのクリエイティブとの出会いからモーション技術を独学で習得して入社したという経歴の持ち主です。ロボットアニメやSF映画といったルーツ、日本の文化の影響など、自身の半生を振り返りつつ、ものづくりに関わるようになった道のりを伺います。
同級生が真似していた、父親のCM
─まずは、映像作品に興味を持ったきっかけから教えてもらえますか。
Charles 小学生の頃に「新機動戦記ガンダムW」を見たのがきっかけです。初めて日本のアニメを見て衝撃を受けました。もともとロボットが好きというのもあって、ロボットアニメやSFにハマっていきました。
もうひとつあるのは、かつて両親が広告業界で働いていて、テレビを見てると「これ、父さんが作ったんだよ」って教えてくれることがあって。学校で同級生がそのCMの動きを真似している姿を見て、父がやっていることを格好良いなと思うようになりました。
─最初は広告の仕事と言われてもあまりピンとこなかったのではないですか?
Charles そうですね。ぼんやりとしかわかってなかったと思います。ガンダムと同時期に仮面ライダーにもハマってたんですけど、ある日、学校が終わって家にいたら急に父親から「仮面ライダー見てる?」って電話で聞かれたんです。「見てるよ」と答えて1時間ほどすると父親が帰ってきて、一緒に仮面ライダーを観始めた。そのときはなんだろうと思ってたんですけど、数カ月後に仮面ライダーをモチーフにしたCMを父が作っていて。同級生が真似してたCMというのがそれなんです。広告って自由なアイデアで仕事ができる、硬いものじゃないんだって知った出来事ですね。
─そうした影響下のもと、本格的に映像を学んだのはいつ頃からになるのでしょう。
Charles イギリスの美大に通いはじめてからですかね。トマス・モアの『ユートピア』をSF映画で例えるなら、といったテーマの論文を書くために、80年〜90年代のマイナーなSF、ロボット作品とかアニメを浴びるように観ました。そこで本格的に映像に興味が湧いて、他のジャンルも色々見るようになっていきました。
─とくに影響を受けたSF映画を挙げるとしたら、どんな作品でしょう?
Charles スパイク・ジョーンズの『her/世界でひとつの彼女』やスピルバーグの『A.I.』が大好きです。どちらもAIモノですね。他にも『ブレードランナー』『メトロポリス』なども好きです。でも一つ選ぶとしたら『her/世界でひとつの彼女』になるかな。ヒューマンドラマとしてもすごく繊細な映画だと思います。サントラも素晴らしいですし、ロケ地が僕が一時期住んでいた中国のとある場所だったりもして、より強く印象に残るのかもしれません。
─学生の頃から映像の仕事に就こうと意識はしていましたか?
Charles いえ、美大を卒業して、中国の実家に帰ったんですけど、ぼんやりとしか将来を考えてなくて。いくつか会社に応募して通ったりしましたが、何をやりたいかはハッキリしていなかったんですよね。当時、美大に通いながら、夜は言語学校で日本語を習っていたんですけど、このまま日本語を使わない環境にいると二度と喋ることはないなと思って、日本に渡ってデザインの学校に入ることに決めました。
maxillaとの出会いとなったある広告
─日本語を勉強していたのは、日本の広告業界を目指していたからですか?
Charles いえ、それは全く考えてなかったです。単純にアニメを観てましたし、『女神転生』をはじめとした日本のRPGは好きだったりして、勉強の一環でゲームに出てくる文字を調べながらプレイしたりしていたんです。でもある時期からアホらしいというか、日本語を勉強すればもっと楽に読めるようになるじゃんって気づいて。そんなきっかけで日本語はずっと勉強していたので、せっかくなら日本でデザインを学ぼうと決めたという流れです。
─maxillaとの接点はいつ頃あったのでしょうか。
Charles デザイン学校を卒業して、制作会社でグラフィックデザイナーとして働き始めてからです。当時は新社会人、そしてグラフィックデザイナーとしてのキャリアのスタートということもあって、とにかく一生懸命でした。仕事に少し慣れたタイミングで振りかえってみると、とてもタフな案件でしたし、個人的に興味を持てるものでもないな、と気がついて。
そんな辛い日々を過ごしていたあるとき、スニーカーを買いたいと思ってネットを触っていると、adidasの「OZWEEGO」の広告が出てきたんです。3年ほど前です。
その広告がすごくカッコよかったので調べてみるとmaxillaが出てきて、興味を持ちました。ただ当時は映像制作の経験があまりなかったので、モーションも勉強して腕を磨こうと、授業に通ってポートフォリオを増やしていったんです。モーションは『エウレカセブン』の楽曲のMVや、maxillaが手掛けた『パトレイバー』の特報映像などが好きで、そういった作品を自分でも作りたいと独学で学んでいました。ある程度数が揃って応募するまでは、1年ぐらいだったかと思います。
─応募したのはデザイナーとしてですか?
Charles そうですね。グラフィックデザインをメインに、モーションもできますという形で応募しました。当時、そういった役職の応募があったか覚えていないんですけど、とにかく一回連絡してみたいと思って、こういうことができます、maxillaの人と会いたいですと伝えました。最初に松野さんと話したのを覚えています。リモートで軽く話して、そこから採用に関わるインタビューを数回受けました。
若くてエネルギッシュな雰囲気
─入社後、社内文化についてどんな印象を受けましたか。
Charles まず、思った以上に平均年齢が若くてびっくりしました。今までの職場はベテランのアートディレクターさんがいたりしたので。雰囲気が若々しくてエネルギッシュなチームという印象で、それは今でも変わっていないですね。
─会社が自分に与えた影響などはありますか?
Charles 社内、社外関係なく、世の中には桁違いのスキルを持つ素晴らしいクリエイターがたくさんいます。そのような環境の中で、自分はどんなふうに立ち回ればいいのか。どんな部分が自分の強みなのかについて向き合わなければいけない、と思うようになりました。そこで今のところ考えているのが、デザイン性や技術的にこだわったものというよりは、アイデアとかモチーフを大切にしていきたいな、ということです。
─具体的にはどのような方向性ですか?
Charles 海外のコメディが好きなんですよ。スタンダップコメディや、シンプソンズに代表されるブラックユーモアのアニメ、ネットミームもよく調べています。言ってることは完全にアウトなんだけど、なぜか笑えてしまうような。そういう方向性が、自分としてはmaxillaが常に目指している「感情に刺す」というポリシーに通じるところがあると思います。万人受けするものではないけど、誰かの気持ちを動かしている。こうした方向性のアイデア、モチーフを突き詰めていきたいと考えています。
開放的な気持ちで、新しいチャレンジをしたい人に
─自分ならではの好きを活かしていくと。
Charles そうですね。メンバーそれぞれが情熱を注いでいたり、好きなものがありますから。ただ、好きなもののジャンルは違ってもどこか路線が似ているというか、近いものがあって。だから集まって話してもトピックがつきることがない。新しく入ってきた人もすぐ誰かと仲良くなる、という光景をよく見かけます。
あと、これまでの職場は会社を辞める人が多かったんですけど、maxillaはそこまで辞める人が多くないんです。それは、自分の仕事をみんな好きで、やりがいを感じているからなのかなと。もちろん、しんどいときもありますけど、好きだから続けられているのかなと思うと、情熱を感じますよね。自分にとっての刺激にもなります。
─どういう方にHelixesが向いていると思いますか?
Charles これまでの仕事に対するモヤモヤした気持ちや発散できなかった制作意欲を一新して、チャレンジしたい!という人は向いていると思います。というのも、僕自身がトップダウン型の風潮の根強い制作会社から転職してきたので、入社した瞬間にものすごい開放感を感じたんです。クライアントとの距離が近く、直接声を聞くことができる。自分から主導権をもって動ける環境なので、やりやすさはかなり違います。自由度の高い環境で新しいものづくりに挑戦したいという人にはオススメしたいですね。
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Speaker
Charles Chung
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Interview & Text
Kentaro Okumura
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Edit
Kohei Yagi
Kanako Himeno
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