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コラム「僕らの“うるさい音楽”」

2020.08.21

Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。

今回は、ディレクターの松野貴仁による連載コラム『僕らのうるさい音楽』の第一回目をお届けします。

数々のMVを作ってきたmaxillaにとっても縁深い、ハードコアやメタルといった所謂「うるさい音楽」の歴史は深く、現行の様々な音楽にも多大な影響を与えてきました。この「うるさい音楽」のルーツの端っこを引っ張り出して、今と昔の繋がりをちょっとだけ紐解いていきます。

ちなみに、サムネイルのスカルは「うるさい音楽」好きの同志、Kotaro Yamadaによるスカルプチャー。現在GUCCIMAZE氏の個展にて彼の作品が展示されています。​​​​​​​

はじめに

僕は2006~2016年までの10年間、バンドをやっていた。ハードコアとかメタルとか呼ばれる、かなりうるさいタイプの音楽だ。

平日に仕事をして、週末には機材車で県外や都内のライブハウスに向かいライブをする。それを10年。今考えたらエナジーしか感じない生活を日常にしていたと思う。それによる弊害というか、後遺症というか、「うるさい音楽」を、それなしでは日常生活がままならないくらいには好きになってしまった。

このコラムは、多分に私見が多く、基本書きたいことを書いていくので、知らない方はこんな世界もあるのかと、詳しい方は生暖かい目で、気楽にみてもらえれば幸いである。

90年代~00年代ミクスチャー / クロスオーバー

この数年、音楽 / デザイン / ファッションにおいて、90年代~00年代カルチャー的な感性を目にすることが増えている。よく聞く話ではあるが、流行のサイクルみたいなものを感じずにはいられない。

90年代~00年代カルチャーやリバイバル

僕は、90年代は「ルーズでラフ」を「タイト」にこなす世代で、その先に「ミクスチャー / クロスオーバー」があったように思っている。要は「なんでもありを地でいくかっこよさ」がもてはやされた時代だったんじゃないかなと。

「音楽」においても、様々なジャンルのミクスチャー / クロスオーバーが存在した。そして30年経って、それらがまた現在のメインストリームになってきているように思う。

maxillaとも交遊が深いCROSSFAITHが最近、”NONE OF YOUR BUSINESS”という曲を発表した。

Crossfaith – None of Your Business (feat. Jin Dogg)

同郷同士であるラッパーのJIN DOGGを客演に招いたこの曲は、お互いの持ち味やパッションを、ジャンルの枠を超えて1つの楽曲に落とし込んだ、まさに2020年産ミクスチャー / クロスオーバーと呼べるだろう。

ちなみに、このJIN DOGGは、2年前に発表したthe Breakという曲でヌンチャクというハードコアバンドの歌詞を一部サンプリングしている。

Jin Dogg – the Break (Nunchaku IchibuFubuku cover)

ヒップホップやラップを生業とするJIN DOGGがこの曲をサンプリングしたのを見た当時、すっと腑に落ちる感覚と、同時にいくつか思うことがあった。

1つ目は先述した90年代リバイバルを実感したこと。

2つ目はラッパーが叫ぶトラップ(*)が増えたなという点。

*トラップ:ハードコア・ヒップホップから派生したヒップホップの1つ。

90年代ミクスチャーではラップするハードコアバンドが多かったのに対して、今はアプローチが逆だなと。当たり前な話だが、流行が巡っても、時代が違えばアウトプットの形は変わるのだ。​​​​​​​

90年代ミクスチャー代表、Limp Bizkit

叫び散らかすラッパー、scarlxrd

エクストリームミュージックからの影響を感じるトラップ、GHOSTMANE

そして3つ目に、JIN DOGGがサンプリングしたヌンチャクをよくぞピックアップしてくれたということ。同時に、もしかしたら、ヌンチャクの個性って今の世代の人からすると、聴いたことない新しい音楽に聞こえるのかもしれないとも思った。

ヌンチャク

勝手にバイオグラフィーすると、ヌンチャクは1993~98年に活動、活動中3枚のアルバムと2枚のスプリットを発表し解散、当時絶大な支持を得たバンドである。このバンドに僕の人生は狂わされた。初めて聞いたハードコア。最初、何かいけないものを聞いてる気がして、ぞわぞわした何かを背筋に感じたのを覚えている。

そして、日本のカリグラフィーアーティストの先駆者的存在、USUGLOW氏によるジャケット / ロゴのデザインや配色は、今見ても斬新でかっこいい。

内容に関しては、いちファンとしていくらでもレビューを書ける気がするが、ただの思い出垂れ流し状態になりそうなので、ポイントを抽出して話したいと思う。

下品で、妙に刺さるキャッチーな歌詞

NYハードコアっぽい、シンガロング満載でグルーヴに富んだ楽曲。時折S.O.D的なハードコアスラッシュで爆進する展開。そこにツインボーカルが乗るスタイルがヌンチャクの特徴だが、そんなことどうでもよくなるくらい曲名と歌詞が一貫して下品で攻撃的である。

12才の当時、CDをかけて必死にマネして口ずさんでいるのを「おまえ大丈夫?」と親から言われた記憶がある。しかしこの歌詞が聴き込んでいくうちにハマる。言葉選びのセンスや独特なグルーヴでなんだか高尚な呪文を聞いてるような気分になってくる。

繰り返しや、ボーカルの掛け合いも絶妙で、めちゃくちゃ耳馴染みが良く、曲中にビープ音で歌詞をわざと聞こえなくするなど、アプローチも柔軟且つ斬新である。そして要所要所で飛び出すキラーフレーズ、特に楽曲の展開含め「3コードで悪いか」の表現力には脱帽だ。

あと1stアルバムに収録された「アナル窒息」(書いていいのか)だけ、急に金属叩いてるみたいなカッチカチの音質になるのは反則級にかっこいい。Slipknotなんて目じゃないくらい金属音がしている。

スプリット「縁あって・・・」

「スプリット」とは2バンドが抱合せで出す1枚のCDのことをそう呼ぶんですが、このスプリットはマジでエンターテイメントだった。

ヌンチャクとデスファイルという2バンドがリリースしたもので内容としては6曲入り、内訳はこんな感じだ。

1. 舌打ち生活 – ヌンチャク

2. Indefferent – ヌンチャク (Death Fileカバー)

3. P.U.M.A – Death File

4. 唄ってマスラオ – Death File (ヌンチャクカバー)

5. ブルーテロー – ブルテロ (合同バンド)

6. ぼくはのば – しを (合同バンド)

お互いのカバーまでは、思いつくアイデアだが、そこにさらに合同バンドによるお遊びの曲が2曲入っている。いかにもその場で思いついたみたいなバンド名がたまらない。

この時点で遊び心に溢れているが、2曲目のヌンチャクによるDeath Fileのカバー「Indefferent」については圧巻の一言。何がって原曲と全然違う。カバーなのにギターリフしか共通点がない。歌詞も原曲と違って日本語でオリジナルだし、これだけ別物をカバーと呼んでいるのは、THA BLUE HERBの「未来は俺等の手の中」くらいしか思い浮かばない。

ここまで自由で自らのスタイルを打ち出していたバンドを後にも先にも僕は知らない。やったもん勝ちとはまさにこういうことだと思う。

最後に

本当は、ルーツを探ることで昔と今のつながりが見えてくることあるよねって話をしたかったのだが、ただヌンチャクが好きっていう話になってしまった。

でも、彼らのスタイルが以後のアーティストに与えた影響が大きいのは確か。それに楽曲は「うるさい音楽」における金字塔ばかり、ということを残すことはできたので今回はこれで結びとしたいと思う。

  • Text

    Takahito Matsuno

  • Edit

    Mami Sonokawa
    Akiko Watanabe

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